15節・7P


 銀行に行き換金して貰うと、旅行バックに1億円を詰めて、早速豪邸に向かった。千絵の背中は寂しそうだった。まるで、死刑台に上るような心境だった。結婚式をむちゃくちゃにした事に対して、今も後悔している。彩子に合わせる顔がない。顔を合わせたくなかった。

 家の前まで来ると、門扉の前でインターホンを鳴らした。玄関から出てきたのはパパだった。玄関を開けると、パパは驚いた表情を浮かべた。

「お久しぶりです」

 千絵は丁寧に挨拶した。

「何のようだ、今頃ぬけぬけと来やがって」

 と、言った感じの表情を浮かべていた。

「今まで何処に行ってたんだ。娘の結婚式をむちゃくちゃにして」

 パパは階段を下りてこようとはせず、玄関の扉を持ったまま話しをした。

「会社が潰れそうだと聞いて、これを持ってきました」

 そう言うと鞄を置いて、走り出していた。坂を下っている間中、涙が流れて、止まらなかった。

 千絵は辛かった。早くこの場から逃げたかった。これで恩は返したので、この家ともおさらばできると思った。自分の気持ちの中で整理が付いたのだ。

「もう二度と、ここへは来ない。こんな辛い目には遭いたくない。これで恩は返したから、後藤家のパパも許してくれるだろう」

 そう呟きながら、来た道を猛スピードで走っていた。目からは涙が止まらなかった。しかし人通りの多い所に差し掛かったとき、ハンカチで涙を拭き、泣きたい気持ちをぐっと我慢した。


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