15節・5P
亜紀子は朝、いつもより早く目が覚め、寝ている千絵を起こした。
「今日は宝くじの発表の日よ。早く起きて」
「もう少し寝させて」
千絵は宝くじに興味がなかった。パジャマのまま玄関から、新聞を取り出すと、早速新聞と宝くじを照らし合わせた。
「当たってないじゃないの。早く起きて、損した」
二度寝したいが、二度寝するほどの時間もなかった。そして寝ている千絵をたたき起こすが、千絵は起きない。
「宝くじは?」
「財布の中」
布団に入ったまま答え、また寝た。亜紀子はふて腐れて、千絵の宝くじと新聞と照らし合わせた。暫く照らし合わせた後、
「当たってるよ!」
亜紀子の驚いた声。でも千絵は起きないので、亜紀子はたたき起こした。
「当たってる」
「いくら?」
「一億!」
千絵は渋々目を覚ました。眠い目をこすりながら、
「お腹空いた。パン焼いていい?」
千絵は亜紀子の言葉を無視した。
「何言ってるのよ。1億当たったのよ」
「私、ジャム塗る」
とんちんかんの会話が続いた。
「一億当たったのよ」
「もういいでしょ。起きたんだから」
千絵は亜紀子のしつこさにうんざりした。亜紀子は千絵を起こすために、嘘を付いたと思ったのだ。信じない千絵のもとに新聞と宝くじを持ってきた。新聞と宝くじを照らし合わせて、ようやく千絵は本当である事に驚いた。
「でも、これ亜紀子が買ったものだから、私の物じゃないわ」
「何言ってるの、あなたに買ったから当たったのよ。欲深い私が買っていたら当たってなかったわ」
千絵はトーストにジャムを塗り、それを口に入れ、コーヒーを飲んだ。
「このお金で家が建てられるじゃない」
千絵は冴えない顔で、興味なさそうだった。亜紀子は時計を見ると、時間がないことに気づき、パンをコーヒーで喉に流し込み、玄関に向かった。急いで靴を履きながら、
「何に使うか考えといてよ」
そう言うと、急いで家を出た。