15節・4P


 2人は夜、テレビを見ながら、缶チューハイを飲んでいた。亜紀子は思い出したように言った。

「そうそう私の昔の写真見る?」

「あー、見る見る」

 千絵は嬉しそうに言った。亜紀子は3段ボックスにあるアルバムを持ってきた。千絵はアルバムを受け取り、ページめくった。

「これ誰?」

 千絵が聞くと、亜紀子は照れくさそうに言った。

「大学の時つき合っていた彼」

「へー。今は、どうなったの?」

「何年も前に別れたわよ。でも彼とはいろいろな所に遊びに行ったわ」

「これは天橋立に行ったときの写真。これは四国に遊びに行ったときの」

 ページをめくりながら説明してくれた。

「これは淡路に遊びに行ったとき」

「へー、いろんな所に行ったのね。私も彼氏が居たときは、淡路に遊びに行ったわ」

「あ、彩子さんという人に、取られたという」

「うん、そうそう」

 千絵は笑っていた。それを見て、亜紀子は言った。

「千絵も、もう諦めがついたのね」

「うん、もう彼のことは忘れた」

 そしてページをめくり、1枚の写真に釘付けになった。

「あ、これ私じゃない」

 千絵の言葉に、亜紀子が驚いた。

「えー!」

 写真の見切れている所に、女の子の顔が半分だけ映っていた。

「えー、違うよ。別人よ」

「別人かな?」

 半分顔が見切れているので、千絵も自信なかった。しかし次の写真を見たとき、更に驚いた。

「あれ、これ彼だわ!」

「えー。そんな偶然あるのね。私たち同じ日、同じ時間に、同じ所にいたのね」

「すごい偶然ね」

 そう言って2人で笑った。しかし次の瞬間、千絵の目からは涙が溢れてきた。それを見た亜紀子は驚いて、千絵の顔をのぞき込んだ。

「どうしたの?」

「これパパだわ」

「えー!」

 亜紀子は腰を抜かさんばかりに驚いた。

「そんな偶然あるの!3組の人が同じ時間、同じ場所にいたなんて。ポーカーでロイヤルストレートフラッシュが出るより、低い確率よ」

「どうして、あの時、気づかなかったんだろう。あの時気づいていたら、今頃こんなに悩んでなかったかも知れないのに」

 ビックリしている亜紀子の横で、千絵は泣いていた。

「でも、偶然にしては出来すぎた話ね」

「もしかしてパパ、私の後を付けていたのかもしれない。知らないのは私だけだったのかもしれない」

「でも、それなら、どうして迎えに来てくれなかったの?」

「そんな事、私には判らない?」

 そう言うと、また泣き出した。

「私がこれだけパパの事を考えているのに、豪邸に住んでいる間パパは一度も顔を見せてくれなかった。今となっては、住んでいる場所を教えるすべも判らないわ。天地がひっくり返るような偶然が起きないと、一生会えないのよ」

 泣き出している千絵をかばうように、

「大丈夫よ。パパとはいつか会えるわ。その為なら私も協力するから」

 亜紀子は励ました。

「どうしてパパが側にいるのに気づかなかったのだろ」

 そのことが悔しくて、悔しくて溜まらなかった。


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