14節・6P
次の日、千絵は住所の所に行ってみた。夜は、不安と興奮であまり寝れなかった。もしかしたらパパに会えるのかと思うと、ドキドキした。豪邸を出て行き、もう会えないと思っていたのに、再会できるんだ。そう思うと胸は高鳴っていた。
住所を手がかりにしていくと、同じ作りの部屋が1階に5件、2階に5件ある作りの安アパートだった。
「こんな所に住んでいたのね」
近づくに従いドキドキしてきた。恐る恐るドアまで近づき、もう一度住所を見、間違いない事を確認すると、ベルを押す手が震えていた。ベルを押す為に前に突き出した人差し指に大量に血液が流れるのを感じ、指が熱い。もう一歩の所で緊張で人差し指が動かなくなり、小刻みに揺れた。心臓もドクンドクンとなっている。
意を決して、ベルを押した。待っている時間が長く感じた。暫く待つが反応がない。
「どうしたんだろう?出かけているのかな?」
もう一度ベルを押した。待っている間、心臓がドキドキ鳴っていた。
「仕事に行っているのかな?」
少し待つ事にした。待っている間も、不安と興奮は続いた。1時間ほど経ったとき、隣の家の人が出てきた。まだ新婚で、若そうな奥さんに見えた。その人に、恐る恐る近づいて聞いてみた。
「1ヶ月ほど前に引っ越しましたよ」
「えー!」
今日会えると思ったのに、今まで高まっていた不安と興奮は一気に冷めた。
「どこへ行ったんですか?」
「さー、ちょっと判らないです」
やはり千絵が考えていたように、パパとの再会は簡単なものではなかった。千絵は帰り道いろいろ悩んだ。
「この家も追い出されたのかな。それとも、まだ借金で苦しんで夜逃げをしたのかな?」
悪い方にばかり考えてしまう。行きは不安もあったが明るかった。しかし帰り道は暗かった。がっくり肩を落とし、とぼとぼと歩いた。