14節・5P
次の日の夕方、亜紀子が仕事から帰ってくると、玄関で靴を脱ぎながら言った。
「今日は、お弁当買ってきたから」
「いつも有難う」
「いいのよ、出世払いよ」
家に帰ってきて、2人で弁当を食べながら、千絵に聞いてみる。
「パパの名前なんていうの?」
「俊介よ。でも、どうして?」
どうして亜紀子が千絵のパパの名前を聞いたのが不思議だった。
「やっぱり!」
「え!何かあったの?」
亜紀子の言葉に、千絵は驚いた表情を浮かべた。
「腕を怪我したって言って、うちの病院に来たのよ」
千絵の顔色が変わった。
「千絵の名前館林でしょ。名前が同じなので、ひょっとしてと思ったんだけど」
それを聞いて、千絵は興奮した表情をしていた。
「それでパパはどうしたの?」
「保健所の住所書きとめたから、明日家行ってみれば」
とメモを渡した。千絵はメモを受け取り、不安そうに住所を見ていた。
「本当にパパに会えるのかな?でも、こんなに簡単にパパに会えないと思う。まだこれから茨の道を1本か2本通らないと、会えないように思えるのよ。幸せが、そんなに急に来るわけないわ」
今までの人生が辛かっただけに、辛くない人生など考えれなかったのだ。だから簡単に願いが叶うようには思えなかった。
「もうパパはすぐ側にいるのよ。この前、飲みに行った帰りに見た人も、パパだったのよ」
亜紀子はニコニコしながら、励ました。