14節・4P


 数日が過ぎた。

「だだいま」

 亜紀子が仕事から帰ってきた。

「お帰り」

 千絵は部屋の中から返事をした。亜紀子は手に紙袋を持っていた。

「ちょっと後ろ向いてて」

「何?」

 千絵は嬉しそうに答えた。亜紀子と暮らすようになり、少し明るくなっていた。

「いいから」

 亜紀子は靴を脱ぎ、部屋の中に入ってくると、

「絶対見ないでよ」

「見てないよ」

 千絵ははしゃぎながら言った。その間に亜紀子は、いろいろな準備をしていた。

「はい、いいよ、こっち見て」

 そう言って振り向くと、テーブルの上には、ケーキがあり、その上に24本のロウソクが立ち、火がついていた。それを見た瞬間、千絵の目からまた涙が一筋流れた。こんなに親切にされ、愛されていることが判ったからだ。

「ありがとう。今日私の誕生日って、知ってたのね」

 泣きながら千絵は言った。

「こっそり調べたのよ。それより早く火を消して」

「うん」

 千絵は涙を拭き、嬉しそうにし、火を吹き消そうと構えた。そのとき10歳の時の誕生日が脳裏に蘇ってきた。あのときも10本のローソクを立て、火を消した。

「10歳の誕生日おめでとう」

 千絵は喜んでいた。あのころはパパもいたし、ママも生きていた。幸せで、何も悩みのない時だった。

「ほら、千絵火を消せよ」

 パパの言葉に、千絵は嬉しそうに消した。パパもママも嬉しそうな笑顔で見ている。もう一度戻れるなら、あのときに戻りたい。

「ほら、早く消して」

 亜紀子が言った。そのとき千絵の目には涙が溢れていた。亜紀子の優しさに触れ、幸せだった頃を思い出すと涙が出てきた。

「どうしたのよ。そんなに泣く事じゃないと思うけど」

「私、幸せよ」

 涙で前が見えず、火を消そうとするが消せない。それを見て、亜紀子ももらい泣きした。

「亜紀子、消して」

「何言っているのよ、あなたの誕生日でしょ」

 亜紀子も泣きながら言った。

「そんなに泣く程の事じゃないから。早く消して」

「10歳の時の誕生日を思い出したのよ」

 千絵は涙を拭い、ローソクの炎を吹き消した。

「おめでとう」

「有難う」

「涙拭いて、食べましょ」

「うん」

 千絵は涙を拭いて、笑顔になった。


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