10節・7P
千絵は部屋で落ち込み、気力を失っていた。今まで側にいた松本がいなくなり、ぽっかり隙間が空いたような感じで、ボーと何もせず1時間ほど過ごした。
そこに彩子が帰ってきた。帰って来るなり、千絵の部屋に向かい、ドアを開けたかと思うと怒っていた。
「もう連絡しないでっていったでしょ!」
「でも?」
気力を失った千絵は弱々しい声で言った。今まで不幸を引きずってきたので、すっかり元の弱腰になっていた。
「彼、あんたのこと嫌いだって」
「えー!」
それを聞いて、泣きそうになった。
「最初から、そんなに興味がなかったんだって。千絵が近づいてきたから、つき合ってあげたんだって」
彩子のキツい言葉に、千絵は何も言葉を返す事が出来ない。そんな千絵に彩子は更にキツい言葉を投げかけた。
「暫くつき合ったら、捨てるつもりだったんだって。傷つく前に別れてよかったね」
そう言うとドアを激しく閉めた。彩子は完全に鬼のようになっていた。1人取り残された千絵は泣き出した。千絵は居候の身なんだから、これくらいしてもいいのよと、彩子の頭にはあった。それが鬼のような形相へと変えた。
「私のこと、好きって言ってたじゃない。あのとき海で叫んだじゃない」
千絵は涙を流していた。
「積極的な彩子より、控えめな私の方が好きって言ってたじゃない。それも全部嘘だったんだね」
完全に彩子の罠にはまってしまっていた。
「自分は幸せになっては行けないんだ。幸せになろうとするから罰が当たったんだ」
そう思うと、涙が止まらなくなった。暫く明るくなっていたのに、このときを期に、また元の暗い千絵に戻っていった。