10節・2P
朝、学校に出かけるときに、ママは2人を玄関まで見送ってくれた。
「これ後期の授業料」
と言いママは2人に封筒に入れたお金を渡した。
「大金だから、落とさないでね?」
「はい」
2人は玄関を一緒に出たが、昨日のしこりが残っていたので、一言も喋らず学校に向かった。
この日の、放課後も3人はまた、校門で待ち合わせていた。しかし千絵の顔が少し引きつっていた。松本は、それを察した。
「どうしたの、千絵。また風邪でもひいたのか?」
「違うの。お金がないの」
千絵はかなり焦っていた。
「財布落としたのか?」
「違うの、授業料がないのよ?」
「えー!どうするの明日締め切りよ!」
彩子は驚いた。
「それが、どこを探しても見つからないのよ」
「どこかで落としたんじゃない?」
2人とも顔色が変わった。
「帰ったら、ママに言って出してもらえばいいのよ」
彩子は、あっさり言った。しかし千絵は、その言葉に反発した。
「ママには言わないで。そんな事言えないわ」
千絵は居候の身分だし、お金を出して貰って大学まで行かせて貰っているのに、お金を落としたなんて言えるはずもなかった。
「流石に2回も出して貰うとなると、ママも怒ってしまうかもしれないわね。どうする120万もの大金」
彩子は冷たかったが、千絵は必死だった。
「もっと探してみる」
「俺が貸してあげてもいいけど」
千絵は助かったという気持ちになった。
「松本さん、あるの?」
彩子は松本さんが、そんなに大金を持っているとは思わなかったので、驚いた。
「あると言うか、カードで借りるんだけど」
「それはダメよ。そんなこと出来ないわ!」
千絵は驚いた。彼氏まで巻き込ましたくなかった。
「毎月、ちゃんと払ってくれればいいから」
「でも2人が別れることも、あるかもしれないし。別れた後も、お金だけ払う為に会うのもおかしいと思うし?」
彩子は、淡々と言った。
「えー!」
千絵は驚いた顔で、彩子の顔を見た。それに拍車をかけるように松本まで調子を合わせた。
「それはこの先、喧嘩して別れる事もないとは言いきれないし」
今度は松本の方を不安げに見た。
「そうよ今の時代、初めて知り合った人と結婚する人など0に近いわ。別れたのに借金返しに来たって会うのも変よ」
更に彩子は調子を合わせた。そして続けた。
「判ったわ。私、貯金あるから、それで何とかする」
「悪いわ?」
千絵は彩子の優しさを感じた。元々は彩子は優しいのだ。でも最近、彩子に怒ってばかりだし、彩子に甘えるわけにはいかなかった。
「いいのよ、条件付きで」
「条件?」
千絵は不安そうな顔で聞いた。
「それは、また家で話そ」
千絵は、段々彩子のペースに載せられている事に不安を感じてきた。家までの道のりは、行きと同じで一言も喋らず、千絵は暗かった