10節・1P
千絵が部屋でくつろいでいると、彩子は真剣な顔で入って来た。
「どうしたの?」
千絵は心配そうな顔で言った。
「千絵の事が悪くて抑えていたけど、やっぱり松本さんのこと、好きになったみたいなの」
彩子は千絵の顔色を伺いながら、下手に出た。
「1回だけデートさせてって言って、一回デートしたでしょ」
千絵は少し強い口調になっていた。
「でも好きになるのは自由でしょ」
千絵は彩子を睨み付けた。しかし彩子は悪びれた感じもなく続けた。
「彼、私に譲ってくれない」
「あなた正気で言ってるの!」
千絵は切れかけだった。
「あなた可愛いし、また素敵な人が現れるわ」
「物じゃないのよ。そんなに簡単に譲れないわ。第一、彼に何て説明するのよ!」
千絵がこんなに怒ったのは初めてかも知れない。彩子の度が越えた我が儘に、驚かされれるばかりだ。
「私が、こんなに言ってもダメなの。誰のお陰で、ここに住めていると思っているのよ」
彩子は逆ギレして、部屋を出て行った。そう言われると、千絵は立場が弱い。どうすることも出来ず、暗くなった。