9節・2P
次の日の放課後、校舎を出ると、雨が降っていた。松本は、校門の前で傘を差して待っていた。そこに千絵と彩子がもみ合いながら校舎から出てきた。
「帰ってよ。諦めたんじゃないの。彼は彩子より、私のように控え目なタイプが好きって言ってたのよ」
「だから1回デートさせてくれたら諦めるって言ってるじゃない。ね、ごめん1回だけ」
最初はキツく言ったが、その後、甘えた声で言った。松本の前まで行くと、
「遅くなって、ごめんなさい」
彩子は明るく、松本に言い、傘をすぼめると、松本の腕に自分の腕を絡ませ、先に歩き出した。その後を千絵は慌てて追っかけた。松本は彩子にリードされて歩いている事に少し喜んでいた。
彩子と松本が前を歩き、喫茶店のドアの前まで来て、後ろにいた千絵が傘をすぼめようとすると、彩子は千絵の方に振り向いて、ビックリすることを言った。
「今日、用事があるって言ってたわよね」
「えー!」
彩子の想像してない言葉に驚いた。
「ああ、そうなの」
彩子の企みに気づかず、素直に話しを受けとる松本にも驚いた。
「じゃ、駅まで送ろうか?」
「いいですよ、自分で帰れるから」
彩子は組んだ腕を引っ張り、店の中に連れ込んだ。ドアが閉まりかけのときに、松本は千絵に言った。
「後で電話する」
そう言われて、千絵は1人、店の外に取り残された。彩子の言葉を信じているのが、信じられなく、雨の中、傘を差すのも忘れて、暫く立ちつくしていた。髪や服は雨で濡れていて、その後も傘を差すのも忘れ、下を向いたまま、足どり重く駅に向かった。
松本を彩子に取られるのではと言う嫌な思いが頭をよぎり、気持ちは暗い。それから、どう帰ったのか、はっきりと憶えていない。