8節・10P
帰りは家まで送ってもらった。千絵は幸せを噛みしめながら、玄関を開けると彩子は飛んできた。
「今日のデートどうだった?」
千絵は彩子を一瞥すると、キスしたことを思い出し、優越感に浸っていた。これで2人の間には、誰にも邪魔される事のない関係を築いたからだ。
「どこ行ったの?」
「遊覧船乗った」
「それで?」
「食事した」
「それで?」
キスしたシーンを思い出したが、それ以上は言えなかった。
「それでどうしたのよ?」
「それで帰ったの」
「それだけ?」
「それだけよ」
千絵は冷たく言った。
「なんだつまらない。また明日会うんでしょ」
「明日は会わない。彼バイトがあるって」
「えー、つまらないな」
千絵は自然に笑顔になっていた。彩子に邪魔されてたまるかと言った気持ちだった。
布団の中に入っても、嬉しさがこみ上げていた。
「パパ、今日松本さんと、キスしたのよ」
千絵は天井を見上げ、嬉しそうに言った。
「私も、こんなに幸せになれたよ。もう自分には幸せは来ないと思っていたのに、私にも幸せが来たのよ」
そのときパパの事が心配になった。
「でもパパは、幸せに暮らしてるのかな?」
「いつか絶対会えるよね」
そう思い、頭から布団をかぶると、眠りについた。