8節・1P


 校門から校舎までの間は20mくらいあり、そこには直径8mもある大きな丸い花壇があり、いろいろな花が植えられていた。校門を入った人は、まず一番に、この校庭の花に目がいく。赤や青、紫、黄色と言ったいろいろな花が咲き乱れ、キャンパスを華やかに盛り上げていた。

 キャンパスは緑のアスファルトがひかれ、その前には校舎が奥に長く伸びていた。鉄筋4階建ての校舎で、薄いピンク色に彩られていた。校門から始まり、校庭を一周するように桜の木が植えられていた。春には桜が一斉に咲き、大学生以外の人も、大勢見に来る。

 校門の花壇周りには、いくつもベンチが置いてあり、絶えず誰かが座わり、くつろいだり、勉強したり、友達と話ししたりして使われている。

 放課後、千絵は校門近くのベンチに座り、本を読んでいるふりをしていて、男を待っていた。

「あー、千絵」

 彩子が千絵に気づくと、走って近づいてきた。こんな時にまずいと思い、聞こえてないふりをした。しかし彩子はしつこかった。

「ちょっとお茶でも飲んで帰らない」

「今日は用事があるの」

「えー、怪しいな。デート?」

「そんなんじゃないんだって!」

「じゃー、今度ね」

 彩子は、すんなり帰っていった。千絵がデートしようが、彩子にとってそんなに興味はなかった。

「あー、来た」

 校舎から出てくる男を見かけた。男は千絵に気づくことなく、校門を抜けて行った。千絵も慌てて本を鞄に仕舞い、校門を抜けた。気づかれないように少し距離を置いて歩いている。大勢歩いているし、男は後ろを振り向くこともないので、気づかれなかった。

 ずっと追っていくと、男は駅前の本屋に入って行った。千絵も慌てて本屋に入った。中はかなり広かったので見失ってしまった。人混みでなかなか前に進めない。

「いないな。確かに、ここに入ったのにな」

 本屋の中をうろうろしたが、見あたらない。

「あ、いた」

 参考書のコーナーで本を見ていたのを見つけた。そして心臓が激しく高なってくるのを感じた。

「どうしよう、どうしよう」

 そう思い冷や汗を流し、気づくとポケットからペンダントを取り出し、強く握りしめていた。

「パパ、私にチャンスを頂戴」

 ペンダントが壊れんばかりに強く握っていた。千絵は参考書のコーナーに入り、少し離れた所で本を手に取り見た。本の内容などは目に入らず、横目で彼を見ながら、もう少し近づき、近くの本を取った。男は千絵の存在に気づいてない。しかし千絵の心臓ははち切れんばかりに鼓動していた。


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