6節・7P
「わー、ママご馳走」
彩子は喜んだ。それにつられて千絵も久しぶりに笑顔を見せた。今日は4人が揃って、テーブルに向かい、夕食を食べた。
「今日はパパもいるのね」
「いちゃ悪いか!」
「だって、いつも帰り遅くて、遊んでくれないから」
「ごめん、ごめん。これからは出来るだけ早く帰るようにするよ」
「それより、2人とも、もう少しで大学受験だけど、どこを受けるんだ?」
千絵の顔が急にこわばった。
「私は、六甲大学」
「千絵ちゃんは?」
「私、大学行かない」
「どうして?勉強頑張っているし、成績はよかったじゃない」
パパは驚いた。
「私、働く」
「千絵は、お金のことを気にしているみたいなの」
彩子が横から口を出した。
「お金のことで気を遣ってくれているの?そんな事心配しないでいいのよ」
ママは心配しないように言った。
「うちはお金持ちだから、ゴミ箱に捨てるくらいお金があるのよ」
パパは千絵が心配しないようにジョークのつもりで言った。そういうとパパとママと彩子は笑った。
「でも?」
控えめな千絵は、後藤家に甘えるわけにはいかなかったので、静かに言った。
「そんなに気にするなら、出世払いでいいよ。大学卒業してパパの会社に就職して、そこで少しずつ返してくれたらいいから」
その言葉に千絵は安心したのか、笑顔に戻った。
「そうよ、お金のことは心配いらないから。大学は出てた方がいいし、心配しないで勉強頑張りなさい」
「私、大学行ってもいいのね」
千絵は喜んだ。胸のつかえたのが取れたかのように喜んだ。楽しい大学生活を想像していたので、大学に行くと幸せが来るように思えたのだ。そして今まで無理だと思っていたので、小躍りしたいほど嬉しかった。それに拍車をかけるように彩子も、すごく喜んだ。
「私も、2人で一緒に大学行けたら楽しいと思う」
「ママは、千絵ちゃんが成績いいから鼻高々なのよ」
「私は?」
ママが千絵のことを誉めるので、彩子はすねた。
「あなたもよ。一緒の大学を受かると、ママも嬉しいわ」
この日は、千絵は長く悩んでいた悩みが吹っ飛び、ことのほか楽しい夕食となった。