4節・8P


 1ヶ月が経ち、いつまでも泣いてばかりいるわけには行かない。千絵は、すっかり豪邸に暮らしに溶け込んでいた。

 ママがテーブルに、2人分のケーキを皿に載せ、ホークを横に添えると、階段の下から、叫んだ。

「2人とも降りてきなさき。ケーキよ」

 ママの声を聞くと勢いよく2人の部屋のドアが同時に開いた。2人は顔を見合わせて、笑顔を見せた。2人は姉妹のように仲良くなり、家族とも溶け込み、豪邸暮らしを楽しんでいた。広い家に、広い部屋、毎食のご馳走や、毎日のおやつ、楽しいことだらけだ。

「わー、美味しそう」

 2人はテーブルに着くなり、一斉に食べ出した。

「もっと落ち着いて、食べなさい」

 ママはキッチンから出てきて、紅茶をテーブルに置いて、すぐに出て行った。

「千絵は、誰が好きなの?」

 彩子はひそひそ話になった。

「誰が好きって?」

「男の子よ」

「私、男の子には、まだ興味ないわ」

 ケーキを食べ終わると、またゲームをして遊んだ。一人っ子の彩子にとっては、千絵が来たことは嬉しい事だった。そして千絵も暫くの間は明るさを取り戻し、楽しく暮らしていた。しかし、それも小学生の頃だけだった。大人になるに従い、現実を理解するに従い遠慮がちになっていった。そして千絵の辛い人生は、まだ始まったばかりだった。


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