4節・6P
止まらず恐怖で顔が真っ青になった。このまま車が来たら、ひかれて死んでしまう。その恐怖を感じた。夜、坂とカーブの多い所では、子供が転がっていてもドライバーには見えない。
「誰か止めて、怖い」
転がった勢いは加速していった。涙の顔は、恐怖の顔に変わっていた。そのときはパパの事より、死への恐怖を感じていた。
「千絵ちゃん」
後ろからママと彩子が、心配で追っかけて来た。しかし千絵が坂を転がり落ちていることには気づいて無かった。
50m転がった所で、やっと止まった。顔は泣き腫れ、服は破れ、手や足はすりむき、あざを作り、痛いたげに血が出ていた。恐怖で顔が引きつり、悲しみと、情けなさで、転がったままの状態で、道にうずくまったまま立ち上げる事が出来ない。
「私もこのまま死にたい。このままここに居ると死ねるかもしれない。ママが居なくなり、どうしてパパまで居なくならないといけないの。あの家に戻っても、私1人じゃ寂しいよ。私を殺してママの所まで連れて行って」
道路にうずくまったまま、大泣きしていた。
ママと彩子は坂を下り、うずくまっている千絵を発見すると、慌てて駆け寄ってきた。悲しそうにうずくまり、服はぼろぼろで、すりむいているのが見えた。11歳の少女が、悲惨な人生を送っていることにママも彩子も、泣かずにいれなかった。
「パパは、いつかまた戻ってくるわ。成功して、千絵ちゃんを迎えに来るわ」
ママは泣きながら、千絵を慰めた。
「ここの家で暮らしていると、パパはいつでも迎えに来てくれるわ。それまでは、一緒に暮らしましょ」
「そうしようよ」
うずくまって立ち上がらない千絵を見て、彩子も泣きながら言った。彩子も千絵の気持ちが十分分かった。同じ年なのに、ママもパパも亡くした辛さは痛いほど判ったのだ。自分がもし同じ立場なら、辛すぎる、耐えれないと思った。
彩子は涙を拭きながら、千絵を抱きしめた。そしてお互い、思いっきり泣いた。2人は千絵を慰め、うずくまっている千絵を支えるようにして家に連れて帰った。
3人がテーブルに着くと、ママは食事を運んできた。豪華な食事が並んでいるのに、千絵は下を向いて食べようとしない。目は涙で腫れていた。それを見た、彩子も食欲が出ない。同じ年だと言うだけあって、一番千絵の気持ちが分かるのだ。
「叔母ちゃんのこと、ママと呼んでもいいのよ」
ママは優しく微笑んだが、千絵は下を向き返事をしなかった