4節・5P


 豪邸暮らしも3日が過ぎ、パパはその日、会社に行き、遅くなっても帰ってこなかった。そのとき千絵と彩子はリビングのソファーに座って、ゲームに夢中になっている。

「やったー、私の勝ちよ」

 2人は本当に楽しそうに遊んでいた。子供が仲良くなるのに時間はかからなかった。そこへママが神妙そうな顔で近づいてきた。

「さっき、千絵ちゃんの部屋のお布団を綺麗にしにいったら、部屋に手紙が置いてあったのよ」

「手紙?」

 封筒の表には「後藤様へ」と書かれていた。

「パパからよ」

「パパから?」

 その言葉に千絵は不思議そうな表情を浮かべた。そしてママは声に出して手紙を読んだ。

「本当に親切にしていただき有難うございました。こんなに親切にしてくれる人が世の中にいるとは、驚きました。しかし、いつまでも甘える訳には行きません。いつか出て行かないと行けない日が来ます。しかし娘を連れて放浪するわけにはいきません。厚かましいと思うのですが、娘をお願いします。いつか成功して迎えに来るときまで、どうかお願いします」

 千絵の表情からは、さっきまでの楽しい表情は消え、引きつった表情に変わっていた。泣きそうな表情に変わったかと思うと、慌てて玄関を飛び出していった。その後を追うように、ママと彩子が追っかけた。

 外灯がともる坂を勢いよく走り降りた。

「パパ、パパ」

 と叫び、ママを亡くしたときの悲しみが蘇ってきた。ママが居なくなり、パパまで居なくなることなんて予想してなかったので辛い。そして3人で暮らしていた頃の幸せな生活が蘇ってきた。旅行に行ったり、映画に行ったり、食事に行ったりと幸せな生活を送っていたのに、そのときは、まさかこんな生活が待っているとは夢にも思っていなかった。

「パパ、パパ」

 泣き叫びながら、高級住宅がある坂を下っていった。辺りは真っ暗で、パパらしい人などいないのだ。それどころか、人1人歩いてない。

 泣きながら、勢いよく坂を下り、キョロキョロしたが人は見あたらない。11歳の子供に両親が相次いでいなくなることは、相当に辛い試練だった。出来るなら夢であって欲しいし、出来るならパパに戻ってきて欲しかった。だから必死の形相で、パパを捜した。しかし勢いよく走ったのと、涙で前が見えないのとで、足がもつれた。

「わー!」

 千絵が叫んだ瞬間、目に映る風景が180度回転した。道に倒れ瞬間、そのまま坂を転がり落ちた。

「わー!誰か、助けて」


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