3節・9P
2人は三宮に着いたのは昼前だった。昼食は我慢し、三宮をさんざん歩いた。
三宮を歩いていると幸せそうな家族の姿、幸せそうなカップルの姿をよく見かける。それを見るたびに悲しくなってくる。お母さんと娘が一緒にいて、お母さんが笑っていると、千絵は悲しくなってきた。「もうママの笑顔は見れないんだ」と思い泣けてきた。
レストランも多く、料理を食べている姿を見ると、美味しそうに見えた。しかし千絵はお腹空いているのをグッと我慢した。
「パパ、足疲れた」
さんざん歩いたので疲れていた。
「少し休憩して、帰ろうか」
時間は夕方の4時頃だった。
「うん」
千絵は歩き疲れ、元気がなかった。近くの椅子に腰をかけると、パパはまたコンビニに入り、おにぎりとお茶を買ってきた。
「これしか買えずにご免な」
「ううん、私食べなくても大丈夫」
千絵は昔通りの笑顔で微笑んだ。千絵は昔から、そんなにわがまま言う方ではなかったが、笑顔を見せてくれた事にパパは最高に嬉しかった。娘の笑顔で元気になれ、これからの人生、娘の笑顔で乗り越えれると思えた。
「これ食べたら帰ろう」
「うん」
また千絵は喜んだ。パパも最高の笑顔を見せた。パパは千絵を思いっきり抱きしめ、絶対に娘は自分の、もとから離さないと誓った。
「これからの人生辛いかもしれないけど、2人で力を合わせて、頑張って生きていこうな」
「うん」
また千絵は微笑んだ。
2人は元気を取り戻して、来た道を戻っていった。帰る途中デパートのショーウインドのマネキンに綺麗な服を着せ飾られているのが目に入った。
マネキンが着ているのは、秋を感じさせる茶色のシックな感じのワンピースだ。ノースリーブで襟元には沢山の花のブローチが飾られ、飾りのベルトがついていた。
千絵は目を輝かしながら、マネキンの服を眺めていた。
「可愛い。これが着れたら、どんなに幸せになれることか」
夢中になり、凝視していた。パパは娘の輝いた目を見て、嬉しくなり、黙って見ていた。千絵は目をキラキラさせながら、ウインドに飾られている服から目を離すことは無かった。そして頭の中では、飾られている服を大人になった自分が着ていて、音楽が流れ、ヒロインになった気分になっていた。そして音楽に合わせて、上手く踊っていた。
「私、絶対将来金持ちになる。そして、こんな服を着るの」
千絵の顔からは笑顔が洩れ、目をキラキラさせていた。