3節・7P
また2人に沈黙が続いた。30分くらい沈黙が続き、哀感(あいかん)の情に浸っていたが、次のパパの言葉に千絵は泣いた。パパはいろんな事を考えたあげく、ペンダントを千絵に差し出した。
「なに、これ?」
「もしもパパと、別れることがあったら、これを見て思い出して欲しいんだ」
千絵は慌ててパパを見て、目をウルウルさせた。
「何言ってるの?そんなこと言わないでよ。パパもどこか行っちゃうの?ママも亡くし、パパも居なくなって、私に1人で生きていけっていうの?」
「そう言う意味で言ったんではないんだ。もしもの事を想定して・・」
パパはしどろもどろになった。その後、千絵はエンエン泣きだし、止まらなくなった。
「パパ居なくなるなんて言わないで。そんなこと言わないで。絶対どんなことがあっても私から離れないで。わがまま言わないし、一緒にいれるだけで幸せだから、絶対そんなこと言わないで」
「パパが悪かった。軽はずみなこと言って」
千絵の涙は止まらなくなった。昼間あんなに泣いたのに、まだ涙が残っていたのだ。パパが何を言っても聞く耳をもたない。しかしパパも娘が1人になったときの気持ちが痛いほど分かる。自分が子供の時の事を考え、悲しくなった。
「これからどんなことがあっても千絵を1人にする事はないし、どんなことがあっても千絵のことは守るよ」
そう言うと、ようやく千絵の泣き声が穏やかになった。声を引きつらせながら、鳴き声が沈静していくのを見て、パパもホッとした。そしてパパは娘をぜったい離さないと心に誓った。
しかしパパの考えとは裏腹に、決められた運命に逆らうことは出来ず、この後、2人は別れ別れの人生を歩むことになる。そして、このとき貰ったペンダントを娘は大切にすることになる。そんな人生を2人は、まだ想像することは出来なかったのだ。