3節・3P


 その言葉にパパは考え込んだが、思い当たる節はない。借金返済の為に、仕事を忙しくしていて、家には寝に帰るだけだった。それにママも2人が心配しないように、苦しそうな表情を見せなかった。ママも大分前から苦しそうにしていたが、お金がなく医者に行くのを、ためらっていたのだ。

「もしかして、お金のことを気にして、隠していたのかもしれません」

 そう思うと、今まで病気に気づき、苦しいのを我慢していたママの辛さが伝わってきた。

 病室を出るとパパは泣いた。

「どうして言ってくれなかったんだ、ママ」 

 床にうずくまって床を叩いた。

「俺が保証人になったばっかりに。どうしてママが死なないといけないんだ。どうして不幸がこう重なるんだ。神は俺たち3人を見捨てたのか?」

 悔しさが次々に露呈して、収まりがつかない。今まで泣いたことのないパパは、涙を止める方法を知らなかった。

「どうして、こう不幸の道を歩まないと行けないんだ。幸せな人は沢山いるのに、どうしてうちだけが、こんな辛い目に遭わないと行けないんだ」

 うずくまって泣いているパパの側を、看護婦が通りかかり、近づいてきた。

「大丈夫ですか?」

 パパは涙を拭きながら、看護婦に抱きかかえられるようにして立ち上がった。涙を拭くと、ママや千絵には、この顔を見せれないと思いトイレに入った。トイレの鏡に自分の顔を映すと、目は腫れて、髪はくちゃくちゃで、服は少し皺になっていて、今まで見せたことのない顔になっていた。このままママに会うと、感づかれてしまうと思い、ハンカチで涙を拭(ぬぐ)った。泣き声で喋ってはまずいので、気持ちを落ち着かせるために何回も深呼吸した。

 やはりママの病気の原因は家に生えたカビだった。換気も悪いため、家に一番長いこと居るママが犠牲になったのだ。普通なら人間の体内に繁殖しないカビだが、大きな借金を抱えたことがストレスとなり、抵抗力をなくしていたのだ。その上、換気が悪かったのも原因した。

 ママの肺に入り込んだカビは、パパの願いとは裏腹に、その後も悪魔のように繁殖を続けていった。


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