2節・3P


 アパートを幸い1万で借りることが出来た。
しかしワンルームでキッチンが付いているが、所々壁ははがれ、カビ臭く、いつも湿気ている。窓などなく、倉庫のような部屋だった。

「少し傷んでるけど、安く借りれたな」

 引っ越した日、パパは穏やかな表情に変わっていた。それを見てママも千絵も、もとの穏やかな表情に戻っていた。

「毎月少しずつでも多く返済していけば、いつかは元の生活に戻れるかもしれないわ。私もパートに出て頑張るわ」

 ママは笑顔で言った。

「うん」

 千絵も嬉しそうに返事をした。ママも千絵も、いつかもとの生活に戻れると思い、今の苦しい生活を我慢した。出来るだけ生活費をきりつめ、足りない分を補うようにしてパパは遅くまで仕事をするようになり、だんだん帰る時間が遅くなってきた。ママも少しだがパートで働くようになった。それにつれ千絵は寂しくなり孤独を感じるようになってきた。しかし、千絵はいつか、前のような幸せな生活が戻ってくると思い、堪え忍んだ。

 前、住んでいた家具などは全て借金の肩代わりとして売り、食事の時に3人が使っている丸テーブルはゴミ置き場から拾ってきたもので、部屋の中には、家具は全くない。茶碗、箸、コップが3つずつあるだけだ。

 この日の夕食は魚とご飯、みそ汁があるだけだ。パパはまだ帰ってなく2人だけの寂しい食事だった。

「でも私は幸せだよ。こうやってパパとママと一緒に暮らせるから」

 千絵はめげない強い子だった。

「食べるだけでも幸ね。一時はどうなる事だと思ったけど、借金返したら、また元の生活に戻れるよ」

 ママと千絵は見つめ合い、微笑んだ。

 しかしこれから始まる不幸の生活は、こんなものではなかった。幸いにも恵まれていたのは、家族がみんな明るかったことだ。不幸にもめげずに頑張ったのだ。


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