1節・5P


 季節が秋から冬になろうとしている頃の日曜日に、家族で映画館に行った。

 映画の内容は、1900年初頭、アメリカの田舎町で貧しい暮らしをしていた家族が、お金に困り娘を養子に出すことになる。娘は10歳で、着る物にも事欠き、何時も同じ服を着ていた。養母は娘をこき使い、掃除、洗濯、料理と働かせて、厳しくあたった。屋敷のような家を掃除するのは大変だった。

「何やってるの、ぐずぐずして」

 何時もこんな感じで養母は娘にあたった。10歳の子供にとってはキツく、冬場、水で何度も雑巾を絞るので、手にはあかぎれや、しもやけが出来ていた。しかし娘は負けては居なかった。いくら、怒られたり、叩かれたりしても、いつか元の家族と一緒に暮らす日を夢見て、必死に頑張った。

「私が、一生懸命働けば、お父さんと、お母さんは、楽出来る。だから私は、頑張るのよ。そして、またいつか一緒に暮らしたい」

 娘は泣きながら、あかぎれの手を水につけ、雑巾を絞った。その小さな手に出来たあかぎれは痛々しかった。

 夜は屋根裏部屋で、1人で寝かされた。夜1人になると、お父さんと、お母さんの事が思い出される。

「今頃、お父さんと、お母さんは、どうしてるのかな?」

 屋根裏の隙間から見える、星を見ていると涙が出てきた。娘は小さい心を痛めていたのだ。そして悪い知らせを聞いたのは、そのすぐ後だった。娘は養父に呼ばれた。

「すぐに家に帰ってあげて」

 そのとき、娘はとうとうお父さんと、お母さんと一緒に暮らせるときが戻ってきたのだと、嬉しさで、スキップを踏みながら家に向かった。しかし家の前まで来たとき、大勢の人がいた。全員が黒い服を着て、何か悲しそうな表情を浮かべている。

「どうしたの?」

 家の中に入ると、お父さんを見かけたので、聞いてみた。

「お母さんが、亡くなったの」

「???」

 娘は意味を理解するのに、時間がかかった。そして意味を理解したとき泣いた。

「いつか、お父さんと、お母さんと、3人で幸せに暮らすと思っていたのに。お父さんも、お母さんも、私が働いたお金で、楽しているとばかり思っていたのに」

 娘の目から溢れ出した涙は止まることはなかった。お葬式を終えても、娘はお母さんの棺から暫く離れることが出来なかった。

「どうして、お母さんは、私を養子に出して、お母さんと一緒に幸せに暮らす前に死んでしまったの。一緒に、幸せに暮らしたかったのに。私は、これからどうやって生きたらいいの?お父さんと、お母さんの為と思って、辛いのを我慢して働いてきたのに。お母さんが居なくなると、私は何を目標に生きたらいいの?」


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