1節・2P
3人は夏休みを使い、伊勢に旅行に出かけた。1年に1回は、こうやって家族揃って旅行に出かけて、家族仲を深めている。
長いドライブで疲れたパパは、旅館の駐車場に車を停めた。旅館は昭和40年に建設された鉄筋4階建ての和室旅館。何度か増築を行い100室にもなる部屋数を誇っている。この旅館は全室オーシャンビューで、食事には伊勢エビが出、露天風呂が2つあるのがうりだ。
車を停めて、荷物を下ろそうとすると、着物姿の仲居さんが荷物を取りに来てくれた。
「お持ちします。お疲れになったでしょ。さー、中でおくつろぎ下さい」
仲居さんの案内でホールに通された。中は広く、ピンクの絨毯が敷かれ、ソファーがあり、天井には豪華なシャンデリヤがぶら下がっていた。パパがフロントに行っている間、ママと千絵は、ソファーでくつろいだ。
その後も仲居さんの案内で部屋に向かい、エスカレーターに乗り、長い廊下を進み、203号室に案内された。その間も、廊下はピンクの絨毯が続き、綺麗な内装に3人は見とれていた。
部屋も綺麗だった。10畳の和室には太い木の柱があり、畳も、襖も綺麗で、落ち着いた感じと、ぬくもりが兼ね備わった感じがする。10畳の奥にはサンルームがあり、テーブル1つと、椅子が2つならべてあった。サンルームの壁は大きなガラスになっていて、そこから伊勢の砂浜と海を臨む事が出来た。
「わー、すごい、こんな綺麗な部屋初めて」
千絵は、はしゃいで、一目散にサンルームに向かい、外を眺めた。その姿を見ながら、ママと、お茶の準備をしている仲居さんが微笑んでいた。
「ママ、窓から海が見えるよ。ほら、後で海に行こうね」
「あとでね」
パパとママは仲居さんの入れてくれたお茶を飲み、お茶菓子を食べ、くつろいでいた。しかし千絵だけは元気で、早く海に行こうとうるさい。少し休憩した後に3人は海を見に行った。
千絵は元気が有り余っているので、砂浜を嬉しそうに走り回っていた。窮屈な車の中で長い事いたから発散させたかったのだ。
「パパ、ママ早く」
千絵は遠くの方から呼んだ。2人を呼ぶと、更に走っていった。
「パパ、ママ早く」
千絵は靴下を脱いで素足になり波打ちぎわまで行って波と戯れたりと元気いっぱいだった。そうしている間に太陽も沈もうとしていて、辺りは暗くなってきた。
「もうすぐ夕食だから戻りましょ」
そう言うと千絵は、笑顔で楽しそうにパパとママのもとに来た。
「あー、伊勢エビ、伊勢エビ」
千絵は伊勢エビを楽しみにしていたのだ。