1節・1P


 芦屋は関西ではお金持ちの住んでいる街で通っている。東京で言う白金といった所だろう。更に公園や緑も多く、それ程大きくはない市だが縦に長い為、北と南では違った顔を見せている。

 北の奥池では、夏涼しく、山にも近く、別荘や保養所が建ち並ぶ静かな所だ。真ん中辺りにある六麓荘ではお金持ちが多く住んでいて、高級な家が多く建ち並んでいる。少し下がりJR芦屋駅前ではおしゃれな店が多く、スーパーもあり、一番人の集まる所だ。

 JRより少し北西の阪急芦屋駅のすぐ横を流れている芦屋川は、春は桜が咲き、川の両岸を淡いピンク色に染め、新緑の頃は河原が緑に光る。国道2号線から、川を北に向いて見る景色は開けていて、広い緑の河原の奥には、六甲の連なった山と、青い空が見え、その間をカシス色の阪急電車が時折横断する。阪急芦屋駅の北側の桜並木も奇麗だ。桜のシーズンや夏場などは河原で花見やバーベキューをしている人をよくみかける。

 更に南に行けば海がある。公園も多く、緑があり、芦屋公園や海沿いには松などをよく見かけ、のんびりとし静かだ。少し東に行けば、シーサイドタウンの高層マンション群が建ち並び、マンションの眼下には宮川や海が見える。もう少し東に行った浜風町には一戸建てが多く建ち並び、その庭からも手が届く位置に海がある。近くの海浜公園からは西宮のヨットハーバーが見える。


 館林千絵はまだ9歳の女の子だ。目がパッチリして、いつもニコニコしていて、元気で明るかった。だから友達も多かった。もうすぐ10歳だが、他の10歳の子と比べたら、少し小柄な方だ。

 千絵のパパの名前は館林俊介、40歳だ。大学を卒業し、コンピューターの仕事を18年間続けている。その間に2回転職したが、同じコンピュータの仕事をずっと続けている。

 千絵のママの名前は館林はるか、38歳だ。パパとママが知り合ったのは、パパの最初の会社で、ママの方はすぐに仕事を辞めたが、5年間恋愛が続き、その末に結婚した。

 ママも千絵と同じで、いつもニコニコしていて、あまり失敗しても気にしないタイプだ。それが娘の性格にも影響したようだ。パッチリした目などは、よく似ている。

 ママは短大を卒業し、3年間コンピューターの仕事をするが、自分にはむいてないと思い辞め、その後はアルバイトで生活していた。5年間の恋愛の末、結婚し専業主婦になる。結婚して2年後に一人娘を生んだ。

 もう結婚して12年にもなるが、夫婦は今も仲良く恋人同士のような感じだ。

 5年前に海の見えるマンションの10階を買った。8畳2間、キッチン、ダイニングが付いていて、3人では、ゆったり出来る広さだ。ここで親子3人が幸せに暮らしていた。金持ちでもなく、貧乏でもなく、ごく普通の標準の家庭だった。

 しかし、この幸せな家庭に、ある日突然不幸が訪れ、家庭が崩壊することになる。


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