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 最後の夕食はカレーだった。僕の最後の夜なので、伯母さんは僕が大好きなカレーを作ってくれた。家でとれた新鮮な野菜がタップリ入ったカレーだ。この日は外が涼しかったので、庭でアウトドアセットを出して、食事をしたので、最後の夕食はキャンプに来ているようで楽しかった。

 毎日のようにプールに行き、いろんな所に遊びに行き、伯母さんの美味しい料理を食べ、本当に毎日が楽しかった。そして近くの山や川ともお別れしないといけない。神戸の家の近くで、こんなに自然が溢れた所はない。魚を釣ったり、カブト虫を捕ったり、もう出来なくなるのだ。ここで知り合ったのり、けんとの思い出、井上との思い出は一生忘れることが出来ないだろう。

 ただ一つ気がかりなのは、井上に帰ることを言えてない事だ。そして楽しかった夏休みも、終わりを告げようとしている事を考えると寂しくなってきた。

 1ヶ月近く住んだ、このまことの部屋とも、明日でお別れだ。24畳の広い部屋で2人で寝たことは楽しかったが、また狭い家に帰らないと行けない。この広い庭ともお別れだ。神戸の僕の家には庭がない。

 でも一番の悲しみは井上と、もう会えなくなることだ。この後、まこととのりとけんとで地蔵盆に行く予定にしているが、そこで、もしかしたら会えるかも知れないと、小さい希望をもっていた。

 

 夕食を終え、片づけをしていると、のりとけんがやってきた。そして朝ラジオ体操をしている神社に向かった。神社では提灯がいっぱいぶら下げられていて、ほのかな光を灯していた。人も大分、集まっていたが、僕達は、まだ始まらないのかと思いながら待っていた。

 そして音楽が流れると、みんなに合わせて、見よう見まねで踊った。しかし僕は心そこにあらず、井上は来てないか目を皿のようにして探した。しかしいくら探しても、いないのでガッカリした。考えてみれば、元気に歩けないし、蛍を見に行ったときも途中倒れたこ事を考えると無理は出来ないはずだ。居ないことが判ると、急にガッカリし、寂しい気持ちになった。

「井上、来てないな」

 のりが言った。

「うん」

「しゅん、明日帰ること言ったのか?」

「まだ、言ってない」

 僕は俯い(うつむい)て言った。

「いいのか?」

「うん。会うと悲しくなるから、会わずに別れる」

 僕は、知らないまに、口からでまかせを言っていた。

「でも僕たちは、しゅんが帰るとき見送りに行くからな」

「うん」

 その返事には元気がなかった。井上が来てくれたら、どんなに嬉しいかと思ったが、現実無理だった。

 そして神社を離れるとき、お菓子を貰ったが、周りの楽しそうな表情をしている子供とは裏腹に、僕は悲しい表情を浮かべていた。お菓子などどうでも良かったのだ。神社を離れ4人で帰るとき、僕の目には自然と涙が溢れていた。僕は周りの3人にばれないように涙を手で拭った。のりとけんと別れると家に向かった。ここで勇気を持てば、今ならまだ井上の家に行けると思った。でも、その勇気は出なかった。

 

 家に帰っても僕が大人しくなったので、まこともあまり喋りかけてこなくなった。布団に入ると、この広い部屋ともお別れかと思って悲しくなった。普段なら布団に入るとすぐに寝れるのに、今日はまったく寝れなかった。井上の事を思い出していたのだ。

 最初の出会いは衝撃だった。釣りに行く途中に、女の子が窓から覗いている姿が見え、あまりの可愛らしさに、そのときの映像が暫く頭から離れなくなってしまった。色白の顔をして、お人形さんのように可愛らしく見え、白くて柔らかそうなほっぺたに、穏やかな表情、優しそうな眼差しをしていた。それ以来、あけてもくれても井上の事ばかり考えるようになった。

「もう一度、あの出会った頃に戻りたい」

 一番最初に会いに行ったときは緊張した。胸は高鳴り、顔は真っ赤だった。でも会ってみると意外と気さくで、すぐにうち解けてくれた。最初僕の顔を見たときは不思議そうな顔をしていたが、まことの従兄弟だと判ってニコッとしてくれたときの笑顔は今でも忘れることが出来ない。いつも布団の上で上半身を起こして、しゃべっていたが、僕達と居るときは何時もニコニコしていた。ワンピースがよく似合い、綺麗なサラサラヘアーは女の子らしく感じた。そして僕達はいろいろな話しをして、井上は何時も僕達の話を楽しそうに聞いてくれた。

 折り紙をしていて手に触れたとき、蛍を見に行ったときに体が触れたとき、僕はドキドキした。井上をおんぶしたときの温もりは今も記憶に残っていて、僕のシャツの上で泣いたときに付いた涙の跡は、今も洗わずに大事にとっているので、そのシャツは今でも井上の匂いがする。

 僕は男なので今まで泣いたことは無いが、今は涙が止まらなかった。明日、昼前には、ここを出る予定にしているので、実質の別れは昨日の蛍を見に行ったときだ。 

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 1缶50〜80円くらいの激安ドリンクを始め、安い商品が多数あります。破損時の返品代引き決算(着払い)もありますので、安心してご利用ください。休日、買い物に行く時間も省け、重い物を運ばなくても、家まで持ってきてくれるのも、嬉しいですよね。


36へつづく