TOP > 小説 > いと美しき祇園の町

   28

 

 翌日の昼、2人は四条河原町からバスに乗り、2kmに渡る哲学の道の出発地点に向かった。道幅は、それほど広くはないが、その道は琵琶湖疏水と並行している。哲学の道は、京大教授、西田幾多郎博士が好んで歩いたから、この名前が付いた。春は桜、夏は蛍、秋は紅葉が美しい。

 バス停を下りたところから桜が咲き乱れている姿が見えた。茜は、はしゃぐように横断歩道まで駆けより、信号が変わるのを待った。信号が変わると茜は駆け出し、亮が跡を追い掛けるようにして付いてきた。

 哲学の道の両側から桜が咲き乱れ、道の内側に向いて咲いているので、桜のトンネルを造っている。2人はその桜のトンネルの中を歩いた。これが2kmに渡って続いているのだ。

「わー、綺麗ね」

「これだけ桜のトンネルが続いているのも綺麗やな」

 哲学の道に並行している琵琶湖疏水にも桜は咲き、琵琶湖疏水に張り出して咲いている。ぽかぽか陽気の中、観光客も多かった。観光客が春色の洋服を着ている仲、茜もピンクの薄手のセーターを着、亮は白のシャツを着ていた。

 ぽかぽか陽気の木漏れ日の中、辺り一面ピンクに染まっている。石畳の歩道は散った花びらが敷き詰められ、上を見れば桜の枝がトンネルを作っていた。

 柔らかい日差しの中、心躍らされ、外の陽気に誘われた人で溢れていた。茜と亮も、その内の2人だ。

 

 哲学の道の終点辺りに、銀閣寺が建っている。足利義政が1482年に建てた東山山荘を、のちに弾寺としたものだ。銀閣寺は金閣寺に習って建てられ、銀箔にするつもりだったが、その痕跡は残っていない。本堂の前には白砂の庭園があり、銀閣の周りには池があり、その池の周りには松を配し、松越しに見る銀閣も美しい。

 展望所から全体が一望できるように造られていて、奥の杉木立と、手前の池の周りの松に身を隠すように、銀閣はひっそりと建っていた。紅葉の季節には、辺りの木々が色ずく。冬、雪に覆われた銀閣も美しい。

 

 銀閣寺を見た後、一旦家に帰り、高瀬川の桜を見に行った。茜は春の陽気に誘われて、気持ちがルンルンし、動きたくてしょうがなかった。道路と川幅7mの高瀬川に挟まれた歩道には桜が咲き乱れていた。川に道路に枝を大きく広げ、川面は桜の花びらでピンクに染まっている。桜の枝を素通りした穏やかな春の日差しは、アスファルトや、高瀬川を照らした。いつもは人も少ないが、この時期は多くの観光客が桜の下を歩いた。2人は春の日差しの木漏れ日の中を歩き、喫茶高瀬川に向かった。

 中に入ると50席ある店内はほぼ埋まりかけている。テーブルも椅子も黒く塗られ、年季と風格を感じ、静かにクラッシックが流れ、落ち着いていた。2人はいつものようにフレンチトーストを頼んだ。

 注文を終え、気持ちが落ち着いたところで、店内の端から端に広がる横長の窓を見た瞬間、2人は息を飲んだ。今通って来た高瀬川の桜が、絵画のような美しさを誇っていた。その美しさを見た瞬間、2人の手は止まってしまった。亮は一度は見ているとは言え、1年前の感動は忘れていた。本当に美しいときは、声も出ないのだ。窓を覆う、桜の美しさ、それを言葉で表現することは出来なかった。

「何て美しいの。こんなに綺麗とは思ってもみなかった」

 茜は感動のあまり、涙がこぼれてきた。そして窓から目を離すことが出来なくなっていた。

「いや、本当に美しい。去年のことなどで忘れていた」

 ウエイターが持ってきてくれていたフレンチトーストには眼もくれず、暫くジーと見ていた。

 そのとき強い風が吹くと、風に吹かれて散った、ピンクの花びらが窓を覆い尽くした。それを見ていた店内の客からは、どよめきが起き、1人が始めた拍手が全体に広がり店内は幸せな雰囲気と感動に包まれた。聞くところに寄ると、春はいつもこのような感じらしい。亮と茜は、お互い目を合わせると、今、幸せを与えてくれる、この場に来れたことに喜び、感謝した。

激安ドリンク、箱買い、まとめ買い(コーヒー、紅茶、炭酸、スポーツドリンク、ジュース、水、酢、栄養ドリンク)
 1缶50〜80円くらいの激安ドリンクを始め、安い商品が多数あります。破損時の返品代引き決算(着払い)もありますので、安心してご利用ください。休日、買い物に行く時間も省け、重い物を運ばなくても、家まで持ってきてくれるのも、嬉しいですよね。


29へつづく