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    13

 

「ただいま」

 玄関が開くと、父の声が聞こえた。慌てて母は玄関まで父を出迎えに行くと、今日は父の機嫌が少しいいように思えた。

「今日は早かったのね」

 父の鞄を持ちながら言った。

「仕事に切りがついたからな」

 父は少し嬉しそうにしていた。

 母はキッチンから料理を父に出し、父はダイニングテーブルで食事をした。父が食事をしているときは、母は父に背を向けて食器を洗っていた。

「仕事に切りがついたし、明日も早く帰れそうやから、久しぶりに外で食事せえへんか?」

「え?珍しい。どうしたの?」

「最近、早苗に怒ってばかりやったし、少しは家族サービスもしないといけないかなって思ったから」

 父は食事をし、照れながら喋った。

「うれし〜。早苗も喜ぶと思うわ」

 母は嬉しそうに、喜んだ。父は固い性格だが、時々優しい面もうかがわす。娘を嫌っているわけではなかった。本当に娘に幸せになって欲しいと思っていたのだ。ただその幸せする手段が、おかしかっただけなのだ。

「小さい頃は早苗ともよく遊びに行って、そのときは仲良かったけど、昼間考えると最近、娘の為に何もしてないなって気づいたから」

「へ〜、あなたも娘を思ったりするのね」

 そう言われると何だか照れてくる。

 父が会話を楽しみながら、美味しそうに食事をしていると携帯が鳴り、すぐに切れた。父は携帯が鳴ったので、スーツから携帯を探したが無かった。辺りを見たときリビングのソファーの上でなったのに気づき、ソファーの上にある早苗の携帯を手を伸ばして、掴んだ。その携帯をジロジロ見ながら、コロッケを箸に掴んで口に入れた。

「今日のコロッケ美味しいな」

「あら、そう。早苗も言ってたよ」

 母は後ろ向きで洗い物をしながら返事をした。娘がどんなメールをしているのかが気になり、携帯のメールを開いた。

「早苗さんと会えなくなってから寂しいけど、僕は学校行って、友達と話しして普段通りの生活を送ってる。早苗さんはどうしてたの?」

 父が広瀬からのメールだと気づいたとき、父の体から静かに冷気が漂った。

「早苗は、まだあの男と付き合っているのか?」

 父は凍り付くような言葉で、母に聞いた。その言葉に母は口ごもった。さっきまでの楽しそうに広瀬のことを語る早苗との会話を思い出し、口ごもったのだ。

「そんな事無いと思うけど。どうして?」

 母が振り返ると、早苗の携帯を触っている父の姿が目に入って凍り付いた。

「あ、何で携帯、置いていったの?」

 母は心の中で娘に叱った。

 

 そこにオレンジのパジャマを着て、髪を拭きながら早苗がリビングに入って来た。ドアを開けると、父が帰っていることに気づき、一歩体が引いた。いつも10時頃に帰ってくるのに、今日は早いので驚いた。更に自分の携帯を触っている父を見たときは、顔色が変わった。

「あっ、それ私の」

 早苗は怒り、父が持っている携帯を取ろうとした。

「お前、まだあの男と付き合っているのか?お父さんが、あれほど言ったのに、まだ判らないのか?」

「判ったから、携帯返して」

「判ったって何を判ったんや?」

「・・・」

 早苗は言葉に詰まった。

「あんな男の何処がいいんや?」

「お父さんには広瀬君の良さが判らないのよ。いつも優しいし、いつも私のことを思っていてくれるし、お父さんには無いところばっかりよ」

 早苗は広瀬の悪口を言われたので、真剣に怒ってしまった。

「取りあえず、これはお父さんが預かっておくから」

 そう言うと、父は胸のポケットに早苗の携帯を入れた。

「待ってよ。携帯取り上げなくってもいいでしょ」

「お前が、本気であの男と別れたら返す。それまでは預かっておくから」

「返してよ」

 早苗は怒って、食い下がったが、父の力には勝てなかった。早苗は喚きちらし、父を力で押さえようとしたが、無理だった。結局、諦めて、喚きながら、階段を走り、自分の部屋に入った。

「お父さん。ちょっとやりすぎじゃない」

「お前は黙ってろ。いつか娘も、俺に感謝するときが来るんやから」

 父が夕食に誘ってくれたときは優しくなったのかと思ったが、全く変わってない事に母はあきれ果てた。

 

 早苗は喚きちらし、部屋に閉じこもると、また大声で泣いた。広瀬とのメールのやりとりが唯一の幸せだったのに、それさへも父に奪い取られてしまったのだ。

「お父さんは、私の幸せを根こそぎ持っていってしまった。小さい頃から全然変わってない」

 頑固な父の性格に悔しくて悔しくてたまらなかった。

「もう広瀬君と連絡取れないじゃないの。どうしよ?」

 悔しさの後は、悲しさに包まれた。

「一筋の光までふさがれ、この先、どう生きたらいいのか判らない」

 早苗は部屋の片隅でうずくまっていた。

「広瀬君は私のこと心配してくれているかな?私がメール送らないことに怒って、嫌いになったかな?」

 そう思うと、ますます寂しくなっていく。

「もうやり直せないのかな」

 どんどん不安が募っていった。

 そのころ広瀬は早苗から返事が来ないことに不安を覚えていた。

「返事が遅かった事に怒ったのかな?それとも、本当に別れる決心をしたのかな?」

 不安になり、もう一度メールを送ろうか、どうしようか悩んでいた。もう一度送って、「ひつこい」って嫌われないかな。

「どうしよ?後5分待って、来なければ、もう一度だけ送ろう」

 広瀬は苦しいくらい悩んでいた。

「どうした?メール届いたかな?」

 5分後に、怖々とメールを送った。しかし早苗にメールが届くはずも無いし、返事が返ってくるはずもなかった。12時まで待ったがメールが来ないことで、本当に別れる決心が付いたんだと思い、諦めようと思った。

「もし明日1日待って、来なければ、きっと僕のことなんか忘れたんだ。そのときは僕も男らしく諦めよう」

 そう心に誓ったけど、寂しさだけが残った。そして寂しさを胸に抱えながら、眠りに就いた。

 早苗は悔しさと、悲しさで、なかなか眠りに就くことが出来ない。

「どうしよ。メール送らなかったので嫌われたかな。本当に嫌われたら、どうしよ?」

 一筋の光だった広瀬の存在が消えかかり、真っ暗闇に突き落とされるような不安にかられた。

「もう一度、明日お父さんに携帯を返して貰うように言おう」

 そう考えたが、すぐに打ち消した。

「でも、それは無理かも知れない」

 そう思うと本当に悲しくなってきた。

 

 広瀬は翌日起きると、まず携帯のメールを見た。しかし早苗からのメールは届いてなかったので気持ちが沈んだ。

「もしかしたら機械の誤作動で届いてないのかも知れない。もう一度だけ送ってみよう」

 そう考えながら、メールを送った。学校に行き授業を聞きながら、1時間待っても2時間待っても返事は帰ってこない。

「どうしたのかな。もしかしたら何処かで倒れているのかな?」

 別の意味で心配になってきた。

「もう一回だけ送ろう。それでダメなら、本当に諦めよう」

 そして昼過ぎに2通目のメールを送った。しかし夕方、家に着いたときにメールを見たが返事はなかった。

「未練がましい男も嫌われる。もう諦めよう。これでこの恋も終わった」

 そう、きっぱり心に誓った。しかし悲しさだけが残った。アパートの部屋の片隅で小さくなって、早苗のことを考えていた。

「お父さんに反対されてもメールくらいは出来るはずなのに。やっぱり嫌われたのかな?」

 今までの楽しい思い出を思い出していると、涙が出てきた。

「もう嫌われたんだろうな」

 諦めの境地になり、1人になったと実感したとき、涙が溢れていた。

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14へつづく