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カーテンから差し込む太陽の光で目を覚ましてのは香代だった。目をこすりながら、枕元の時計を見て驚いた。時計の針は10時半を指していたのだ。
「あっ、今日の飛行機何時の便なの?」
山崎は突然起こされたので、眠そうに目をこすっていた。
「何?」
「今日の飛行機、何時?」
「夕方の6時」
香代はホット胸をなで下ろした。
「でも、もう10時半よ。チェックアウトしないと」
「もう、そんな時間」
山崎は眠そうに、起きあがった。
「昨日、遅くまで遊んでいたからね」
香代は眠そうな山崎を優しく見ていた。
「ちょっと風呂入ってくる」
まだ半分目が覚めてないので、目を覚ますたために風呂に向かった。
「私も一緒に入る」
そう言うと嬉しそうに後ろを着いていった。2人で湯船に浸かると、少しきつかった。山崎は、香代の後ろに座り、香代の背中から抱きしめるようにして湯船に浸かった。
「昨日、遅くまで遊んでいたから、もう昼になってしまったね」
香代は優しい目で、山崎にもたれていた。
「モーニング食べれなかったけど、ランチ食べに行こうか?」
「食べたら空港に向かわないとね」
「そうだね」
「お昼は、どこで食べる?」
「旧居留地にある洋食の店に行こう」
「あっ、洋食もいいね」
「そろそろ風呂出て、チェックアウトしよ」
「うん」
香代は嬉しそうだった。
荷物を鞄に詰め、ホテルを出たのは12時前だった。2人はまた手を繋いで公園を出ると、東に向かった。
「今日は、久しぶりにゆっくり寝れたね」
「昨日、寝るの遅かったから、まだ少し眠いかも」
「でもバスでも飛行機でも寝れるからいいね」
「香代も、学校始まるまでずっと暇なんでしょ」
「山崎君と出会わなかったら、年末ボーと過ごしていたと思う」
山崎も香代もニコニコしながら喋っていた。少し歩くと昔の重厚な建物が見えてきた。
「ここ一昨日来たばっかりなのに、すごく懐かしい感じがする」
山崎は懐かしそうに言った。
「もう神戸ともお別れだから、名残惜しいんじゃない」
「うん。もっと居たかったよ」
「1週間以上、神戸に滞在したけど、廻った所は三宮、神戸近辺だけだもんね」
「ほんと。今度神戸に来たときは、もっといろいろ廻りたいよ」
「うん。私がちゃんと案内してあげるからね」
「ありがとう。アメリカから帰ってきたら、真っ先に香代に連絡するから」
香代はニコニコして頷いた。そしてランチが食べられる店を探した。
昭和10年に開店した「ランプ亭」の店内は当時のままほとんど改装はされていない。明治時代に建てられたビルの1階の一角に「ランプ亭」の店舗がある。ビル自体かなり古い感じで、薄暗い。しかししっかりした造りなので、震災にも壊れることもなく、今でもしっかり建っている。
廊下を歩くと、ショーケースの中に食品サンプルが展示されていて、その横のドアがあった。ドアは古い木のドアで、ノブが付いていた。そのノブを回すと、意外と奥に広く、窓も無いので、ぱっとした明るさではなく、ほんのり明るいと言った感じなので、洞穴に入っていくような感じがする。お昼時なので100席はほとんど埋まっていて、奥の方の空いている席に2人は座った。店内にも数本の太い柱があり、壁や柱の上半分は白、下半分は鶯(うぐいす)色のペンキが塗られ、所々色がはがれていた。天井には鈴蘭の形をした照明が、ほんのり店内を照らしていた。
「昔懐かしい感じがするね」
「ほんと、昔の神戸ってこんな感じだったんだね」
2人は昔に浸っているかかのように、周りをキョロキョロしていた。
「こんな店が残っているのも珍しいね」
「いつまでもこの状態で残していて欲しいね」
「そうね」
山崎はタンシチューを頼み、香代はハンバーグを頼んだ。他のメニューは、ハイシライス(ハヤシライス)、オムライス、エビフライ、トンカツなどで種類はそんなにはない。料理は当時のまんまの盛りつけで、タンシチューやハンバーグには真っ黒いデミグラスソースがタップリ掛けられていて、その上にはポテト、ケチャップを和えたスパゲティー、人参が盛られている。
「すごく柔らかい」
香代がハンバーグにナイフを差すと、すっと切れた。
「タンシチューも柔らかい」
山崎も嬉しそうに口に入れた。大きく切ったハンバーグを口に頬張ると、美味しいそうに食べた。タンシチューもハンバーグも柔らかく、その上にかけられているデミグラスソースはトマトと赤ワインを2週間煮込んで作られている。
「何か懐かしい味がする」
「ほんと。昔のことは判らないけど、何か昔懐かしい味がする」
「昔の人は、こう言うの食べて、ハイカラとか言ってたんでしょうね」
香代は嬉しそうに言っていた。
「昔の神戸って賑わっていたんだろうね」
「タイムマシーンがあったら当時を覗いてみたいね」
「新開地もよく聞くけど、新開地も賑わってたの?」
「新開地は大正、昭和初期じゃない?でも私生まれていないから、よく判らない」
香代はニコニコしながら言った。
「新開地って、どこにあるの?」
「JR神戸駅を西に10〜15分くらい歩いた所」
「へ〜」
「昔は、あの辺りに湊川と言う言う川があったらしいけど、洪水があって移動したの。そこを埋め立てて新開地が出来たの。その当時は映画が全盛の頃で、映画と共に発展していった感じだったけど、映画が衰退してからは、当時の元気は無くなったみたい」
「へ〜。串揚げは新開地が発祥なの?」
「それは大阪の新世界じゃない?でも関東では串揚げと言うけど、関西では串カツっていうの」
「カツでないのも串カツって言うの?」
「うん。カツでなくっても串カツって言うのよ」
香代がそう言うと、2人は笑った。
「そしたら、ここで問題。洋食はどこの国の料理か判る?」
香代が串カツの事を説明してくれたので、今度は山崎が負けじと質問をした。
「えっ!洋食?」
山崎の質問に香代は真剣に考え出した。
「オムライスはどこの国の料理かしら?オムレツはフランス?」
また更に考えた。
「トンカツやエビフライは、どこの国の料理かしら?」
「ハヤシライスは、ご飯にハッシュドビーフをかけた料理?」
香代が考えている間、山崎は黙って聞いていた。
「ヨーロッパだけど、何処の国か判らない?」
香代は暫く考えた後に答えを出した。
「ブー」
香代が間違えた答えを言ったことに山崎が嬉しそうに答えた。
「え〜、どこの国の料理?」
香代は目をキラキラさせながら、好奇心旺盛に聞いてきた。
「答えは日本料理」
「え〜!、日本料理なの!」
香代は驚いた。
「オムレツは外国にあるけど、オムライスは日本独特のものだし、エビフライやトンカツも日本独特の物。ハヤシライスは林さんが考えたと言う説があるくらいだから日本食」
「あっ、そうか!」
香代は謎が氷解し、ニコニコしていた。「明治になって外国文化が入って来て、外国料理も入ってきて、それをアレンジして作ったのが洋食なの」
「あ、そうだったの。今までヨーロッパの料理とばかり思ってた」
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18へつづく |
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