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 2人は雪道を歩いた。男の後を香代は1歩下がって、うつむき加減で歩いていた。昨日の夜中降った雪はすでにやんでいて、昼前になってやっと太陽の光が差し込んできて、雪に反射して眩しかった。

「ここにしよ」

 5分くらい歩いた所で男が言った。香代が顔を上げると、店頭の看板には「モダン・クリスタル」と書いてあった。香代は下を向いていたので、どこをどう歩いたのか憶えてない。この店は前から知っていたが、外から見るとおしゃれな感じなので1度入ってみたいと思っていたが、まだ入ったことはなかった。男が店内に入ると香代は黙って後ろを付いていった。

 店内は教会を改装している。神戸には昔の建物を改装した店が多くあり、教会を改装したり、学校を改装したり、旧居留地に行けば昔の会社や倉庫、銀行などをリフォームし、ショップやカフェになっている所が多い。

 天井は高く、周りにステンドガラスがはめ込められ、そこに日の光が差し込むと、店内はカラフルに光り、店内の壁、床、テーブルなどは赤、青、緑、黄色などの色に包まれていた。

 ウエイトレスに案内されて席に着いたが、まだ12時前とあって、そんなに混んでなかった。

 ウエイトレスにメニューを渡され2人はパスタセットを頼んだ。男が頼んだのはアラビアータ。香代が頼んだのはホタテとエビのクリームソースのスパゲティーだ。パスタにはパンとサラダと飲み物が付いた。ここの店の特徴は、少し太めの麺。この麺が美味しく、小麦の香りがし、しっかりとアルデンテに茹でられている。更に太めの麺にこってりしたソースが絡み、麺とソースとの味の調和がとれていた。

 アラビアータはトマトを10分くらい煮た物に唐辛子を効かしたソースで、パスタの上には刻んだ大葉が載せられていた。男が麺をホークで絡めて、口に持ってくると、ソースと、スパゲティーと、刻んだ大葉が絶妙のバランスで美味しかった。

 ホタテとエビのクリームソースのスパゲティーは、エビとホタテは軽く茹で、そのだしが出たお湯に白ワインを少し入れ、アルコールをとばした後、ホワイトソース、生クリームを加え、柔らかくなった所で先ほど茹でたエビ、ホタテ、スパゲティーを入れて絡めたものだ。麺の上には生のバジルが載っていた。

 ホークでスパゲティーを絡めると、スパゲティーに絡んだホワイトソースにエビやホタテが絡まり、香代は口に頬張った。欲張って口に入れたので、口は膨れ、いつまでももぐもぐ言わせていた。口にクリームを付け美味しそうに長い時間もぐもぐしていた。

「美味しい?」

 初めて男が口を開いた。2人は知り合ったばかりなので、ぎこちない雰囲気が漂っている。

「後に残る生クリームの味が溜まらなく美味しい」

 このとき香代は初めて笑顔を見せた。それに山崎はほっとして更に言葉を繋いだ

「僕のアラビアータも美味しいよ」

 山崎は香代に笑顔を見せ、皿を差し出した。それに応えるように香代はホークで少し麺をすくい、口に入れた。

「この辛さが、後引く味ね」

 2人は少し、うち解けた感じになった。

 

 その後、食事を終えるまで、2人の会話は途切れてしまった。コーヒーをすする音だけが響いた。

 「あー、そう、自己紹介しとく。名前は山崎隆行で、大学3年生。昨日東京から来たばっかり」

「東京の人なんだ?」

「神戸の人なの?」

 山崎は香代に聞いた。

「私の名前は山本香代で、大学1年生で、生まれも育ちも神戸っ子」

「おしゃれな街に住んでていいな?」

「でも住んでると良さはあまり判らないけどね」

 そう言うと下を見て微笑んだ。

「そうだよね。僕も東京の良さ判らないし」

「神戸に何しに来たの?」

 香代はコーヒーを一口飲み、聞いた。

「ずっと神戸は憧れの都市だったし、1度来てみたいと思ってたので、学校の冬休みを利用して来たの」

「へー、私も今度、東京行ってみたいな」

「元旦の日にアメリカに行くから、それまで神戸で過ごそうと思って」

「へー、そんなに長くいるんだ」

「ガイドブックを見ていると神戸の良さを判るには1週間くらい掛かりそうな気がしたから」

「うん。それくらい掛かるかも知れないね」

「この辺りに異人館って言うのがあるの?」

「うんあるよ。でも私、行った事無いの」

 香代は少しはにかんで言った後、少し沈んだ声になった。

「神戸に住んでいるのに?!」

 山崎はビックリした顔で聞き返した。

「しかも今住んでいる家は異人館のすぐ近くなのに」

 香代は明るく言って笑った。

「そんなに近いなのに行った事無いの?」

 山崎も、つられて明るい口調になり笑った。

「私には夢があって、異人館は好きな人と手を繋いで行きたいと思ってるから、それまでは行かないでおこうと思ってるの」

「へー、そうなんだ」

 そう言うと山崎はコーヒーを飲み、考えた。

「さっきも途中まで行ったんだけど、カップルばっかりで男1人で行くの恥ずかしくて引き返してきたの」

「クリスマスに、男の人1人で行くのは少し恥ずかしいかも」

 少し間が空いた後、香代は答えた。

「よかったら案内してくれない?」

 山崎はコーヒーを一口口に入れ、言いにくそうに切り出した。

「うんいいよ」

 また間が空いた後の返事だったので、山崎はホッとした。まだぎこちない雰囲気が2人の仲には流れていた。

 

 香代は隣の席に置いた白いニットの帽子と、白いニットのマフラーを首に巻き、ニットの手袋をした。

「準備万端だね?」

 山崎は笑った。

「私、冷え性だから」

 香代も笑った。2人はカフェを出ると異人館に向かって、坂を上っていった。

「この辺は急な坂が多いね」

「そうなの。この辺は坂が多いから、私も最初はつらかったけど、今はもう慣れた」

 そう言うと舌を少し出して笑った。

 

 異人館の辺りは異国情緒たっぷりの街で、外国料理の店も多い。もともと外国人に当てられた土地は、海辺近くにある今の旧居留地だったが、海側の旧居留地に住めなくなった外国人は、山手に家を建てるようになった。この辺りの家は、明治から大正にかけて建てれれていて、うろこの家、風見鶏の館、ラインの館、萌黄の館など約20軒の家が公開されている。異人館は急な坂の上に点在しているので、全部を廻るのは大変だ。趣のあるレストラン、カフェも点在し、異国情緒あふれる町並みが出来上がった。

 2人は北野坂を上り、まわりにおみやげ物屋が現れた辺りから、更に勾配がキツくなってきた。2人はハアハア言いながら坂を上った。

「ほんとにきつい坂だね」

 山崎は肩で息をしていた。その横では香代の息も荒かった。

「家、この近くじゃや無かったの?」

「近くだけど私の家の近くはもう少し緩やかだから」

「あ、そうなの!」

 香代の家はこの近くだが、家の近くはもう少し緩やかで、異人館の辺りから急に勾配がキツくなる。

 2人は息を切らしながらニコニコして話ししていた。

 息を切らしながら、やっとの思いで北野町中公園にたどり着くと、大勢の観光客がいたので驚いた。

「ちょっと疲れたよ」

「ベンチに座ろうか」

 そう言って2人はベンチに腰掛けた。

「こんな坂がきついとは思わなかったよ」

「ガイドブック読んでるだけじゃ判らないもんね」

 疲れた山崎の横で、香代の息は普通になり、少し距離を置いて静かに座っていた。それに対して山崎はまだ香代とうち解けれないことに、少し寂しさを感じた。

「少し楽になってきた」

「後ろに見えるのが風見鶏の館なの」

「へー!」

「異人館の中では唯一レンガの建物で、館内はアールヌーボー調」

「あ、そうなんだ」

「それで西側にあるのが萌黄の館」

「あ、あの萌黄色の」

「そうなの。萌黄色だから萌黄の館」

「後の家はどこにあるの?」

「後は下と上に別れて、固まってるの」

「まだ上にもあるの?」

「上はもっと坂がきついよ」

「じゃ、下に行こう」

 そう言うと2人は笑った。

 お土産屋の辺りまで下がると、左に曲がり北野通りを歩いた。北野通りの両側には旧パナマ領事館、英国館、仏蘭西館、ベンの家が建ち並んでいる。

「この辺りには有名なパン屋もあるよ」

「へー。エキゾチックでおしゃれでレトロで。面白い所だね」

「面白い所だよ」

 香代はニコニコしていた。

 2人がお土産屋に入り、いろいろ商品を見て、出てきたときには外は暗くなり、雪がちらほらしていた。

「あ、また雪が降り出してきた」

 香代は目を輝かしながら言った。

「この辺りは、よく雪降るの?」

「うーうん。あんまり降らないよ」

「あ、そうなの。じゃ、クリスマスの日に雪降るのは珍しいの?」

「クリスマスに雪が降るなんて初めてかも」

「へー!じゃー僕は幸運だ」

 次第に雪は激しくなり、空は暗くなった。風も吹き、斜めから雪が吹き込んできた。香代は嬉しそうに口を開けていると、口の中に雪が入り、眉毛を白く染めた。山崎も雪で顔が白くなっていた。それを見た香代は、笑った。

「香代さんこそ、面白い顔しているよ」

「山崎さんの方が面白い顔してるよ」

 2人は笑いながら言い合った。

 雪が激しくなってきたので、近くのアンティックな家具の店に入った。

「今日は、ありがとう」

「うん。私も暇だったから」

「クリスマスなのに1人で過ごす予定だったの?」

「そうなの。予定無かったの」

 香代は笑顔で答えた。

「それなら僕も1人だし、後で夕食食べに行かない?」

「いいの?」

「いい店、調べとくから」

「じゃー、暇だし」

 香代は笑顔で答えた。アンティックな家具の店を出たときは雪はやんでいた。

「雪もうやんでる。じゃー、後で」

 山崎は香代に大きく手を振って別れた。香代も嬉しそうに手を大きく振って反対方向に歩いた。
激安ドリンク、箱買い、まとめ買い(コーヒー、紅茶、炭酸、スポーツドリンク、ジュース、水、酢、栄養ドリンク)
 1缶50〜80円くらいの激安ドリンクを始め、安い商品が多数あります。破損時の返品代引き決算(着払い)もありますので、安心してご利用ください。休日、買い物に行く時間も省け、重い物を運ばなくても、家まで持ってきてくれるのも、嬉しいですよね。




3へつづく