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10

 

 更に歳月が流れ、かおりは20歳になりOLをし、武は大学に進学していた。かおりは前の会社を辞め、事務の仕事に就き半年になり、この会社自体は小さい会社で、10数名ほどのアットホームな会社だ。そこで女の子数人が働いていて、グレーの地味な制服を着せられていた。

 未だに男の人とはつき合ったことがなく、言いよってくる人もいない。それに弟が現れるまでは自分は幸せになっては行けないと、自分に言い聞かせていた部分もあったので、男の人を寄せ付けないオーラーを出していたのかも知れない。

「ルーブル・ガーデンの招待券貰ったんだけど、一緒に行かない?」

 会社の給湯室で同じ時期に入った山本めぐみがかおりを誘った。終業時間を迎え、かおりとめぐみは、社員の湯飲みを洗っていたのだ。

「えー、フランス料理の店でしょ。いいの私で。彼氏とかじゃなくって」

「知ってるでしょ。彼氏いないの」

「でも私、着ていく服ないし」

「そんなの何でもいいのよ」

 かおりはフランス料理と聞いただけで少し緊張していた。

 

 休みの日の昼、かおりとめぐみはルーブル・ガーデンの店の前に着ていた。店の玄関はこぢんまりしていて、青の日差しに、白の壁、大きな青の扉だった。その玄関先には緑が飾られていた。

 めぐみが店の扉を開けると、外からは想像が付かないくらい奥行きがあった。かおりは遠慮しがちに、めぐみの陰に隠れた。

「私、こんな所に来るの初めてだから、何か緊張する」

 店内は明るく、落ち着いた感じだった。人もそんなにはいなく、すいていて、天井が高く、天井も壁も白に統一され、床板も白、丸テーブルには白のテーブルクロスがかけられ、椅子は明るい青。店は海のコンセプトでイメージされていた。

 全面ガラス張りで太陽の光が燦々と入ってきて、天井からのダウンライトの明かりで充分明るかった。

 ウエイターが席に案内している間も、かおりはめぐみの陰に隠れて付いていき、ウエイターに案内されるまま、窓側の席に着いた。

 めぐみは、どんな服でもいいと言いながら、自分だけはちゃっかり、おしゃれをしていた。かおりは家の中から出来るだけ、いいと思われる服装を探したが、そんなに高級な服装はなかったので、持っている中で一番上等なのを着た。服装は少し明るめの、赤のシャツに、オレンジの薄手のカーデガンを羽織った。しかしスカートは地味なのしかなく、グレーのチェック柄のものだった。この恰好でフランス料理の店にいるのが恥ずかしくなってきた。

「私、貧乏ってばれるんじゃないかな?」

「大丈夫よ!」

「何かみんな見て居るような感じがする」

「気のせいよ。もっと堂々としてればいいのよ」

 かおりは穴があったら入りたいような心境だった。

 窓からは手入れの行き届いた庭が見え、太陽を浴びた芝が青々と光っていた。

「綺麗ね。私一度でいいから、こういう店、来たかったの」

 楽しそうにしているめぐみとは裏腹に、かおりは緊張して楽しんでなかった。

「私には、こんな所似合わないよ」

「せっかく来たんだから楽しみましょ」

 そう言いながらも、きょろきょろ、おどおどしていた。

「もう帰ろ。胸が張り裂けそう」

「でもただなんだし、せっかく来たんだし。帰ったらもったいないよ」

「私のような人が来ていいのかな?」

「かおり、あそこ見てよ。あの人達も若そうだけど、貴方よりも、ずっと落ち着いていて堂々としているよ」

 かおりが横を見ると、3人組の男は、ブランド品を身にまとい、静かに足を組んで座っていた。

「本当だ。若いけど、様になっていて、カッコいい。何かお金持ちって言った感じがする」

「なんかカッコいいね」

「本当。でも私とは次元が違う所で暮らしている人みたい」

「私、ああいう人と結婚したいな」

 めぐみはうっとりした目で言った。

「やめときなさいよ。結婚相手はお金より、性格で選ぶものよ」

 かおりは釘を刺した。

 

 テーブルに最初に運ばれてきたのは生ハムのサラダだった。歯ごたえがあり、味のしっかり付いた生ハムが、レタスの上に載っていた。生ハムでレタスを包みながら食べると美味しかった。

 そしてコーンスープが運ばれてきた。

「このスープ美味しいね」

「うん。普段家で食べる粉末のスープとは違うね」

「それはそうよ。お金かけてるんだから」

 2人は笑った。

 そしてメインディッシュが運ばれてきた。メインディッシュは鴨とトリフのパイ包み焼きに、フォアグラのステーキだった。かおりは初めて見る料理にビックリした。もちろんトリフもフォアグラも見たこともなければ、言葉さえ聞いたことがなかった。

「これ何て言う料理?」

「私も知らないわよ」

 めぐみは聞かれても、めぐみも見るのも聞くのも初めての料理だった。

「何か分からないけど美味しいね」

「フランス料理ってすごいのね」

 2人は感心しきっていた。

 メインディッシュを食べ終わると、ケーキと紅茶が運ばれてきた。

「ケーキまで出るの?」

「フランス料理ってこう言うものよ」

「私、定食くらいしか食べた事無いから知らなくって」

「誰かに聞かれたら恥ずかしいよ」

「少しずつ持ってきてくれるのも高級な感じがするね」

「うん。普通に食べたら1万円以上はするわよ」

「えー。でもあそこに座っている男の子達、慣れて居るみたいだけど、よく来るのかな?」

「何か悔しいね。同じ人間なのに、どうしてこんなに格差が出来るの」

「でも私は今の生活でいいよ。金持ちなんかにはなりたくないよ」

 かおりは、貧乏に生まれ育ったので、お金には興味が無かった。

「へー、謙虚だね」

 2人は紅茶をすすりながら、楽しそうに喋っていた。

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 1缶50〜80円くらいの激安ドリンクを始め、安い商品が多数あります。破損時の返品代引き決算(着払い)もありますので、安心してご利用ください。休日、買い物に行く時間も省け、重い物を運ばなくても、家まで持ってきてくれるのも、嬉しいですよね。




11へつづく