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15
秋本は麻紀の家のベットで、一緒に寝ていて、明け方、夢を見ていた。目の前に崖が現れ、そこに1人の女性が近づいてきた。よく見るとゆり子だ。辺りは真っ暗だった。ゆり子は崖の上に立ち、下を眺めている。20mくらいはある断崖絶壁で、波が岸壁に激しくあたり、水しぶきを散らしていた。何度も波が岸壁に激しくぶち当たっては、砕けるのが見えた。そして次の瞬間、ゆり子は崖から飛び降りた。吸い込まれるように海に向かって落ちていき、ゆり子は暗闇に消えていった。
秋本はビックリして目を覚まし、汗びっしょりになっていた。この前と同じ夢だった。昨日の電話と言い、嫌な予感がした。横で寝ていた麻紀は、その音で目を覚ました。
「どうしたの?」
麻紀が秋本を見ると、汗びっしょりかいていた。
「すごい汗じゃない。ごめんなさい、暖房、暑かった?」
時計を見ると、まだ朝6時だった。麻紀は暖房を弱にすると、また眠った。夢を見たのは、ゆり子のお母さんの計らいだった。どうにかして自殺を阻止して欲しいという気持ちで、秋本に夢を見させたのだ。
秋本は嫌な夢を見たなと思った。でも、唯の夢だろうと思いとどめ、時計を見ると、まだ朝早かったので、また寝た。
朝は男3人で、いつものようにキャンパスで菓子パン、コーヒーなど飲みながら喋っていた。
「ゆり子さんは1人で京都に旅行に行ったんやて」
高橋が喋りかかけた。
「えー!どうして知っとん?」
秋本は不思議そうに聞いた。
「一昨日、偶然会って、またサークル戻ってこないかって聞いたら、明日京都に行って、実家に帰るんやて」
高橋が説明をした後、暫く沈黙が続いた。
「女の子の京都の一人旅。何か意味ありげやな」
小林が冷やかした。秋本は昨日の電話といい、今日の夢といい急に不安になってきた。
「傷心旅行か?」
今度は高橋が冷やかした。
「まだ、お前のこと好きなん違うか?」
小林が言った。
「そんなこと無いよ。俺はふられたんやぞ」
そう言いながらも、不安な気持ちを消すことは出来なかった。そしてこれから話す小林の言葉にも不安は助長された。
「ちょっと気になることがあるんや」
小林は急に深刻そうな顔になった。
「どうしたんや?」
高橋が聞くと、小林の次の言葉に秋本は驚かずに入られなかった。
「今朝、ゆり子さんが夢に出てきたんや」
「うん」
その言葉に、秋本と高橋はどんな夢なのか、気になり、小林の目をジーッと見ていた。
「それが、自殺する夢なんや!」
その言葉を聞いた瞬間、秋本の顔は血の気が引き、真っ白になった。
「そんなに驚かんでも。唯の夢なんやから」
小林は大袈裟にしたくなかったので、否定した。
「俺も、今朝ゆり子が自殺する夢を見たんや」
秋本の言葉に、小林と高橋は凍り付いた。
「2人が同じ夢を見るなんて偶然すぎひんか?」
高橋が言った。
「もしかして自殺する気じゃないんか?」
小林が激しい口調で言った。
「京都行った後、実家に帰るって言ったのか?」
秋本は高橋を責め立てるように言った。
「うん。そう言うとった」
高橋の顔からは血の気が引いていた。
「今から止めに行かへんと」
小林は慌てていた。
「え、今から行くんか?」
高橋が言った。
「いつ死ぬか判らんのやぞ。さっさと行かへんと」
そして3人は慌てて学校を飛び出した。
そのころ、ゆり子は暗い表情でホテルをチェックアウトをした。その後JRに向かい、福井行きの特急券を購入し、ホームで30分ほど待つと特急はやってきた。平日なので、特急の中は、そんなに混んでなかった。終始暗い表情を浮かべ、席についても暗い表情のままで電車の窓から、外を眺めていた。
3人は急いで小林の家に向かい、車を用意した。小林が運転し、助手席には秋本が座り、後ろに高橋が座った。
「福井と言っても、何処へ行けばいいのか判るんか?」
秋本が不安そうに言った。
「ちゃんと彼女の実家の住所と電話番号を調べといたから」
小林が嬉しそうに言った。
「でも彼女、今どこにいるんかな?京都なのか福井なのか判らんな?」
高橋が言った。
「あっ、そうや。彼女の携帯に電話したらいいんや」
小林は秋本に言った。
「何で気づかんかったんやろ。もしかして説得出来るかもしれんし」
高橋は秋本に促した。しかし秋本から冷たい返事が返ってきた。
「おまえ電話してくれよ」
秋本は自分で電話するのが恥ずかしいので、高橋に命令した。
「番号教えて」
秋本が電話しようとしないので、しょうがなく高橋がかけることにした。暫くすると、次のような言葉が携帯から流れた。
「只今、携帯電話の電源が切れているか、電波の届かない場所に居ます」
それもそのはず。ゆり子は昨日の夜中に電源を切ったのだ。固い意志で自殺を決めていたので、周りからの連絡を絶ってしまったのだ。
「電波が届かんない所にいるみたい」
暫くの沈黙の後、
「もう福井に行ったのかな?」
不安そうに答えた。また沈黙が続き、その頃、車は高速に乗り入れた。
「でも2人が同じ夢見るって偶然では片づけられへんで」
高橋が後ろの席から身を乗り出して言った。
「彼女が自殺する夢、2度目なんや」
秋本の言葉に、小林と高橋は、また驚いた。
「2度目って、どういう事や?」
「前にも全く同じ夢を見たことがあるんや」
「えー!」
2人は驚き、ますます自殺に対しての現実味が増してきた。
「それと・・」
秋本は言いにくそうに言った。
「まだ何かあるんか?」
高橋が言った。
「昨日、彼女から電話かかってきたんや」
「えー!なぜ黙っとったんや」
小林は驚いた。
「それで何て言っとったんや」
高橋が慌てて聞いた。
「今までありがとうございましたって」
秋本は静かに言った。
「それだけか?」
「うん」
秋本は静かに答えた。
「それ最期の挨拶じゃない。もう自殺するのは確実やな」
小林は冷静に言った。その言葉に3人は緊張がピークに来ていた。
福井までは特急で90分ほどだ。まだゆり子は特急の中だった。相変わらず悲しい目で窓の外を眺めていた。綺麗な景色もゆり子の目には入ってこなかった。今はお母さんの事だけを考えている。
「お母さん、もうすぐ行くからね。お母さんを早く死なせてごめんなさい」
ゆり子の目から涙が流れた。特急を降りると京福電鉄に乗り換えて、三国へ向かった。実家は途中の駅で降りたらいいのだが、実家に寄るつもりは無かったので三国の海に直接行った。
男3人は、高速道路でイライラしていた。渋滞に巻き込まれてしまったのだ。
「俺たちが着くまでにゆり子さんが死んだらどうしよ」
小林はイライラしていた。
「落ち着けよ。焦っても仕方ないぞ。それより対策考えよう」
秋本は落ち着いて、提案した。
「まず実家のある場所を地図で調べといてくれへんか?」
秋本は高橋に言った。
「よし、任せといて」
「まず福井に着いたら、実家に電話してみよう。彼女の携帯にも電話してみよ」
小林が焦っているのに対して、秋本は冷静沈着に答えた。そして秋本の冷静な対応に、小林は落ち着いた口調になり、場は和んだ。
その頃、ゆり子は福井電鉄に乗っていた。相変わらず窓の外を見て、悲しそうな表情を浮かべていた。
男達が北陸自動車道を福井ICで降りたとき、ゆり子は福井電鉄で三国駅に着いていた。車は福井市街に入り、店が建ち並んでいた。
「ちょっと止まってくれよ」
そのとき高橋が急に言葉を発したので、2人は驚いた。
「どうしたんや?」
運転していた小林は、何かを見たのかと思い、驚いて聞いた。
「お腹空かへんか?ちょっと食事しようよ」
「何言うとんや!ゆり子さんが死ぬかもしれんのやぞ。よくそんなのんきなことを言ってられるな」
高橋の脳天気な言葉に、小林は本気で怒った。
「いい加減にしろ。ゆり子が居たのかと思ったで」
秋本も怒っていた。その言葉に高橋はシュンとしてしまった。でも高橋の意見も一理ある。朝、少し食べただけで、その後食べてないのだから、お腹空くのも当然の事なのだ。所が事態が事態だけに、2人にはお腹が空くことは、ゆり子の事をそれほど思ってない証拠、脳天気と映ったのだ。
「それより、彼女の実家に電話してみてくれへんか?もう実家に着いてるかもしれへんし」
小林は秋本に言った。
「うん。判った」
秋本は緊張しながら、ゆり子の実家にダイヤルをした。しかし何回呼び出し音を鳴らしても、誰も出ないので、電話を切った。
「誰も出えへんな。お母さんは、どうしとんやろ?」
「あの子、お母さんいない見たいなんや」
小林の言葉に、悲しいムードが漂い、沈黙が流れた。
「今度お前、ゆり子に電話してくれよ」
秋本は、また高橋に頼んだ。
「俺よりお前の方がいいんちゃうか?」
「俺がかけても出ないと思う。お前の方が安心すると思うで」
しぶしぶ高橋はゆり子に電話をした。しかしさっきと一緒で繋がらない。ゆり子は電源を切ったままなのだ。
「電源切っとんかな?」
そう言いながら、高橋は電話を切った。
「こうなったら実家の方に行くしかないな」 秋本と高橋は、小林の指示に黙って従った。
ゆり子は、すでに崖の先に立っていた。崖の高さは20mくらいあり、ゆり子が崖の先まで行くと、崖の下はゴツゴツした岩で、波飛沫が岩にぶつかり砕けていた。更に冬の日本海は寒かった。崖に立つと風がびゅうびゅう吹いていた。ゆり子は寒さと、緊張で足がすくんだ。波も冬の日本海を象徴するように荒く激しかった。
気持ちを抑えるためにペンダントを握りしめると幾分、気持ちが落ち着いた。
「秋本さん、どうか幸せになってください。私の分まで生きてください。今までありがとうございました」
男達3人は地図を頼りに迷いながら1時間半ほどかけて実家にたどり着く事が出来、家の前に車を停めた。
「ここか?」
小林は表札を見ると、後藤の文字があった。
「ここやな」
高橋は確信した。インターホンの前で3人は緊張しながら、
「お前押せや」
「お前が押せや」
秋本と高橋がもみあっている仲、小林がインターホンを押し、2人は呆気にとられた。そして3人はインターホンの前で姿勢を正した。30秒ほど待つが、何の応答もないので、もう一度鳴らしてみた。しかし応答がなかった。そこに隣の叔母ちゃんが近づいてきた。
「ご主人は夜にならないと帰ってこないよ」
「あの、ゆり子さんと同じ大学の者なんですが、ゆり子さんは帰ってきてませんでしたか?」
「あの子なら4月に神戸に行ったきり見てないね」
「あー、そうですか」
3人はがっくりした。
「もしゆり子さんが帰られたら、こちらの方に連絡貰えないでしょうか?」
「ああ、いいですよ」
小林は自分の携帯番号をメモ帳に書き、叔母ちゃんに渡すと、叔母ちゃんは愛想良く応えた。
ゆり子は崖の先で、緊張を取り除こうと、ギュッとペンダントを握りしめていた。しかしまた足がすくんだ。昼間なので人も多い。人の少なくなった夜にしようと考え直し、夜まで時間をつぶすことにした。
3人が車に乗り込むと、小林は車を走らせた。
「どうやって探す?広すぎるぞ」
高橋が後ろから身を乗り出していた。
「俺の夢では崖から飛び降りる夢やったけど、秋本の夢はどうやった」
小林が言った。
「俺の夢も同じ。崖から飛び降りる夢」
「あっ、そうだ海に行けばいいんだ」
小林は興奮した。
「そうだ」
秋本もつられて興奮した。
「なんで今まで気づかんかったんや?」
そして、すぐに車は海に着き、車を停めると、秋本が車を降り、海に近づいていった。風がびゅうびゅう吹いていて、目の前は靄がかかり、前もハッキリ見えない。
「さむー」
そう言いながら車に戻ってきた。
「ここには崖はないな」
車が着いたところには崖が無かった。そして疑問が出てきた。
「でも、こんなに広い海、何処を探せばいいんや」
秋本は悔しがった。
「早くしないと自殺した後かもしれんぞ」
小林は不安になってきた。
「とりあえず海沿いに車を走らせよう。崖らしいものがあったら、そこで車を停めよう」
秋本が言った。そして、そのまま1時間、車を走らせるが、崖など見えない。太陽は沈みかけようとしていた。
「早くしないと」
小林は焦っていた。しかしいくら車を走らせても崖は見あたらなかった。
「ちょっと止まってくれ」
高橋が急に言葉を発したので、秋本、小林に緊張が走った。
「何か見つかったのか?!」
運転していた小林が驚いて聞いた。
「お腹空かへんか?」
「ふざけるな。こんな時に、ゆり子さんが死ぬかもしれへんのやぞ」
小林は爆発していた。
「でも朝から菓子パンだけやから、お腹ぺこぺこで」
小林が爆発したので、高橋は遠慮がちに言った。高橋はお腹空いて、フラフラだったのだ。
「判ったよ、近くのコンビニでパンでも買おう」
小林は幾分、穏やかに話した。そう言えば食事してないことに気づき、急にお腹が空いてきたのだ。
「良かった」
高橋はホッと胸をなで下ろした。
車を走らせながら、その中で菓子パンとホットコーヒーを飲んだ。
「何かキャンパスに居るときのことを思い出すな」
高橋行った。
「何ゆうちょな事を言っとんや」
小林は高橋の言葉にあきれかえった。
「早くしないと夜になるぞ」
秋本は焦っていた。しかし腹が満たされると不思議なもので3人はホッとした気持ちになれた。今までお腹が空いていたから、いいアイデアが出なかったが、空腹が満たされると秋本は大事なことを思い出した。
「あ、そうや」
「何か思い出したんか?」
秋本の言葉に、小林が反応した。
「このへんに自殺の名所があるんちゃうか?昔テレビで見たことがある」
それに拍車がかかったのか、小林も大事なことを思い出した。
「そういえば夢に出てきた崖、どこかで見たことあると思って、胸の奥に引っかかっていたんや」
「思い出したぞ。あれ東尋坊(とうじんぼう)ちゃうか?」
その言葉に小林は興奮した。
「あーそうや。東尋坊や」
秋本も興奮し、慌てて地図をめくった。
「東の方角や。そう遠くはないぞ」
「判った」
3人は興奮状態になっていた。そして車は急いで東尋坊に向かった。日は、もうすでに沈んだ後だった。
「急がんと」
東尋坊は言わずとしれた自殺の名所。高さ20m以上の絶壁が1kmにも及ぶ。温泉、旅館、ホテル、キャンプ場、レジャー施設と多数有り、観光地になっているため観光客も多くいる。ライオン岩、ロウソク岩などのゴツゴツした岩が多く、崖から覗いた景色は迫力があり圧倒される。冬の北陸と言うこともあり、海に立っていると風がキツくて寒い。
車が東尋坊まで来ると、沢山の崖が見えてきた。
「東尋坊って広い範囲なんやな。またここで悩んでしまうな?」
「こんな広いとは思わんかったな」
「夜も暗いし、よく判らんな?」
「もう死んだ後だった、どうしよ」
「本当にここに来ているかも疑問やな」
「後は神に任せるしかないで」
3人に疑問や不安ばかりが湧いてくる。車をゆっくり走らせ、3人は東尋坊の崖を目をこらすようにじっと見ていて、誰も喋る人はいず緊迫したムードが漂っていた。しかし日も暮れ、辺りは暗くてよく見えない。このころには、運良くびゅうびゅう吹く風は収まり、怖いほど静まりかえっていた。車は崖の端まで来たがゆり子を見つけることは出来なかったので、3人は焦りだした。
「見つけることが出来ひんかったな」
「もしかしてもう飛び降りたんかな?」
「おい、変なこと言うなよ」
「もう一度戻って探してみよ」
そう言うと車をUターンさせた。さっきより更に真剣な目で崖の周囲を探し回った。そして秋本の次の言葉で緊張が張りつめた。
「あそこ、崖の先に誰か居るぞ」
「本当だ」
「ちょっとお前見てきてくれよ」
「わかった」
車を停めると、高橋は崖に向かって走っていった。その間、車内では緊張感は続いたが、高橋はゆっくりと戻ってきた。
「全然違う人だった」
その言葉に秋本と小林は、ホッと胸をなで下ろした。
「でも急がないと」
高橋が車に乗ると、すぐに車を発進させた。辺りを探すが、暗くて判らない。
暫くすると張りつめた緊張の糸を断ち切るように高橋が言った。
「ちょっと止めてくれ!」
「居たのか!?」
車中に緊張が伝わった。
「あそこ」
「え、どこどこ」
小林と高橋は目を皿のようにしてみた。しかし高橋の次の言葉に、また小林は爆発した。
「アソコ、公衆トイレ」
「ふざけるな、見つかったのかと思ったで」
「もう少し我慢しろよ。今それどころじゃないんやから」
「もう限界なんや。さっきからずっと我慢しとうから。もし止めてくれへんのやったら、車の中で漏らすぞ」
「わかった。車止めるまで、チョッと待っとけよ」
小林は慌ててて車を停めた。車を停めると高橋は一目散に公衆トイレに向かった。高橋を待っている間、小林はイライラしていた。
「あいつ遅いな。早くせんと、ゆり子さんが死んでしまったら、どうするんや。どうして、あんなにのんきにいれるんや」
小林は貧乏揺すりをしている横で秋本は冷静に言った。
「あれ、ゆり子ちゃうか?」
秋本がそう言うと、2人は1点に釘付けになった。彼女が崖の上に立っている。そこにのんきな顔した高橋が戻ってきた。
「あれ絶対ゆり子やで」
その言葉に高橋も振り返り、3人は血相を変えた。
「早くしないと飛び降りるぞ」
車のエンジンを切ると、必死になって3人は崖に向かって全速力で走った。
崖に向かうとゆり子は崖の先まで歩を進めようとしているところだった。
「ちょっと待ってくれ」
血相を変えた3人がゆり子の方に向かったが、ゆり子には、その言葉が耳に入らず、暗い表情で思い詰めたように、崖の先に向かおうとしていた。最初に秋本がたどり着き、ゆり子を後ろから羽交い締めにし、その後に続いて小林、高橋も止めに入った。ゆり子は後ろから急に羽交い締めされたので、レイプの時を思い出し、恐怖の表情に変わった。
「やめて下さい」
恐怖の表情を浮かべ、大きい声を出していた。
「目を覚ませ。死ぬのはまだ早いぞ」
聞き覚えのある声にゆり子はハッとし、秋本だと判り、ビックリした。ビックリした表情で周りを見れば小林、高橋も居ることに気づいた。なぜ3人が、ここに居るのか判らなかった。これは夢ではないかと思い、暫くは放心状態が続いたが、3人が居ることにホッとさせられた。
「何してるんですか?」
「何してるんですかじゃなぞ。心配したぞ」
「ゆり子さんが自殺するんじゃないかって、みんながとめに来たんや」
その言葉を聞いて、ゆり子はドキッとした。誰にも言ってない事を、言い当てられたので、自分の心の中を見透かされているように感じた。そして、ゆり子は大人しくなった。
そのまま、ゆり子を黙って車に乗せると、神戸に向かった。ゆり子は暫く放心状態で、車の中も沈黙が流れた。暫くの後、ゆり子は重い口を開いた。
「どうして、私が死ぬって判ったんですか?」
静かに喋った。
「それが不思議なんやで。夢でゆり子さんが飛び降りる夢を見たんや」
隣に座っている高橋が答えた。
「えー、夢で?」
「それも2人が全く同じ夢を見たから、本当やと思って」
「でも、どうしてこの場所が判ったんですか?」
「夢で見た崖をtvで見たことあって、それで東尋坊やって気づいたんや」
「え!」
ゆり子は納得し、落ち込んだ状態で、それ以上、話をすることはなかった。そして今朝見た母の夢などに思考を巡らせていた。母が助けてくれたのか?
その後、神戸に着くまで4人に沈黙が流れ、重い空気が流れた。そして夜中遅くに神戸に着いた。
これから行くから、
母の元へ。
母を失ってから、
卑下してきたの自分の人生。
もう悩むことは終わりにしたいの。
だから母の元へ行く。
母の所に行って、
謝りたいの。
募る思いを。
私を許して、
許されない、この気持ちを。
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16へつづく |
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