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第三章 秋

 

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 新学期も始まり、最初のサークルの集まりの日、教室の前では、秋本と麻紀が仲良さそうに話しをしていた。

「この前約束した映画いつ行ってくれる?」

「考えときます」

「考えとくって、もう1ヶ月過ぎてるのよ。もう映画終わってしまうよ」

「ちょっとバイトの方が忙しくて、行けなくて」

「私に興味がないの?」

 麻紀は半切れ状態だった。秋本は恐怖から笑顔を浮かべた。

「じゃー、次の日曜日にでも」

「あ、そう良かった。嫌われたのかと思った」

 麻紀は、やっと笑顔を見せた。

「そんなこと無いです。嫌ってないです」

 秋本は、そう言って笑った。本当は、麻紀の事をそれほど好きでもなかった。ただ先輩だし、無碍に断ることが出来ずに、笑顔を見せただけなのだ。

 ゆり子は新学期も始まり、初めてサークルの教室に向かった。今でも秋本の事を思っていて、少しでも気づいて貰おうと、2人で一緒に買ったネックレスを肌身離さずつけていた。それを誰かが話題にしてくれれば、もしかしたら、よりが戻せるかと微かな望みにかけていた。久しぶりに、みんなに会うので緊張感と言うか、恐怖感を感じていた。麻紀はどう思っているのか、秋本は誤解しているし、海に行ったときキャンセルした事もあり、教室へ向かう間ドキドキが止まらなかった。真っ直ぐの廊下を歩いた先に教室がある。教室が近づくに連れ逃げ出したい気持ちになった。

 廊下の途中から、教室の前で秋本と麻紀が一緒に楽しそうに話ししているのが見えた。2人は笑顔で仲良さそうに話しているように見えたのだ。ゆり子は、その姿を見て泣きそうになったが、下を見たまま、気づいてない振りをして歩いた。。

「自分はもう必要ないんだ」

 そう感じた。更に2人が目の前に居ることで、近づく事への恐怖感を感じ、2人に合わせる顔が無かった。どう思われているのか不安だった。緊張に耐えかねて、2人に見つからないように、とっさに横道にそれて逃げた。このとき勇気を出して教室に行けば、もしかしたら別の道が開けていたかもしれない。それを自分自ら絶ってしまい、微かな望みも失ってしまった。

 ゆり子は、教室に行くのを諦め、トイレに行って泣いた。秋本との楽しかった2回のデート。ゆり子は、それだけで幸せだった。しかし、その後の誤解と、酷い仕打ち。秋本と麻紀に誤解されて、それが晴れることがない。そのまま、苦しい日々が続き、自分の力で、どうして誤解を取り除き、人生を切り開いていくのか、ゆり子には、その考えがなかった。大人しいというのもあるし、若いというのもある為、人生の進み方が判らないのだ。そう言う、いろいろな事を考えていると、胸が苦しくなり、涙が止まらない。自分は悪い事などしてないし、秋本の事を今でも愛している。それなのに、誤解が誤解を生み、あらぬ方向に進んでいった。自分は、やっぱり薄幸なんだ、薄幸から抜け出せたかのように思えたが、やはり無理だったのだ。失恋だけではなく、これからも暗い人生を送らないと行けないのかと思うと、悲しみが止まらなかった。

 その後は、下を向いたまま、とぼとぼと歩いて帰った。どう歩いたのか憶えてない。酔っぱらいが本能で家に帰るように、ほとんど憶えてなかった。

 そして家につくなり、服も着替えず、ベットの上に乗り、思いっきり泣いた。

「もう秋本の事は忘れよう」

 ひとしきり泣くと、そう強く決断した。涙で枕はぐじゃぐじゃになり、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

 朝はいつものように男達3人は、キャンパスで菓子パン、コーヒーを飲みながら喋っていた。

「昨日、ゆり子さん、サークルに来なかったけど、どうしたんやろか?」

 小林は心配そうに秋本に聞いた。

「知らん」

「ゆり子さん、見たか?」

 高橋にも聞いてみた。

「お前達、本当にもう会ってないのか?」

 小林は心配そうに言った。

「会ってないで」

「どうかしたのか?」

 今度は高橋が聞いた。

「俺は、からかわれていたんやで」

 秋本はやけくそになり、大きい声で言った。

「あー、ゆり子さんじゃない。久しぶり。こっち来て座って」

 そのとき高橋が声をかけた。ゆり子は少し離れた所から秋本をジーと睨んでいた。さっきの秋本の言葉を聞かれたのだ。秋本は不機嫌な表情を浮かべていたが、指すような視線に苦しくなり下を向いた。

「さっきの話、聞かれたんやで」

 小林はゆり子に気を遣い、秋本を責めた。しかし秋本はふて腐れていた。二度とゆり子の顔など見たくないと思っていたからだ。

「こっち来て、座ろ」

 小林の言葉にも、ゆり子は笑顔を見せずに、静かにその場を立ち去った。それを見ていた小林は、

「あんな事言ったから、ゆり子さん怒ってしまったんやで」

 秋本は暫く返事しなかった。そして切れた。

「怒りたいのは俺の方なんやで」

 秋本は今までに見せたことの無いくらいの迫力で怒ったので、周りの人間は凍り付いてしまった。

 ゆり子は静かに3人の場から逃げ、みんなの姿が見えなくなると、走ってキャンパスを抜けた。近くにある公園で、木陰に座ると、堪えていた涙が一気に吹き出した。幸い公園には人はいなかったが、人が来るかもしれないので声に出すことは出来なかったが、涙が止まることはなかった。

「もう、本当に諦めよう。これ以上思っても辛いだけ」

 今まで何度もこの台詞を心の中で呟いた事か。でも諦めることが出来なかったのだ。木にもたれ掛かるようにして泣いていた。すでに講義は始まっていたけど、そんな事はどうでも良かった。涙だけは止まらなかった。

 しかし彼女の首筋には、2人で買ったペンダントが光っていた。

 

 

出会いは桜の咲く頃、

桜の下で。

私が好きになり、

一目惚れ。

消極的な私が、

モーションをかけたのは、

初めての事。

貴方を思う気持ちは誰にも負けない。

突然の出会い、

突然の別れ。

本当は出逢わなければ良かったのかも?

出会ったことが不幸の始まりとなった。

出逢わなければ、こんなに苦しむことはなかったのに。

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12へつづく