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季節は既に夏を迎えていた。秋本、ゆり子の服装も夏の服装になっていた。大学も休みに入り、今回は2回目のデート。お互い消極的なため、周りが動かしてくれて、やっと2回目のデートにこぎ着けたと言った感じだ。
ゆり子はさらさらの、膝丈の真っ白なスカートに、ピンクのノースリーブを着ていた。秋本はTシャツに、白のズボンを着ていた。
前回と同じでJR三ノ宮駅で待ちあわせをし、ゆり子が先に着て待っていて、秋本は後から着た。
「待った?いつもご免」
秋本は笑顔で答えた。ゆり子も嬉しそうに笑顔を見せると、2人は三宮駅を南に下った。
「暑いね。また一緒に海、行きたいね?」
「はい」
今回は秋本は積極的に話すようにした。秋本が少し前を歩き、ゆり子の手を繋いだ。ゆり子は恥ずかしそうに下を見、顔を赤らめていた。
駅を南下し横断歩道を渡ったとこに、露天商が店を開いていて、ペンダントやアクセサリーを並べていた。そこで2人は足を止めた。
秋山が暫くシルバーのペンダントを眺めながら、
「これよくない?」
「はい」
そのペンダントを2つをくっつけるとハート形になる物で、1つでは半分のハートでしかない。
「これください」
そう言うとお金を渡した。
ハートの半分のペンダントをゆり子の首にかけてあげた。ゆり子は嬉しそうに、今までに見せたことの無い笑顔を見せた。ゆり子にとっては最高に幸せだったのだ。
しかし幸せは長くは続かなかった。ゆり子は薄幸な運命を背負っていたのだ。母が死んでから、自分の事を不幸だと思っていたし、訳あって自分は幸せになっては行けないと誓ったのだ。だからあまり笑顔も見せないし、人と話すこともしないし、幸せも来るはずがない。やっときた幸せも掴むことが出来ず、取り逃がしてしまう。今のこの時が彼女の幸せのピークだったのだ。そしてゆり子は、これからくる不幸を感じていた。今まで薄幸な人生を送ってきたので、幸せが長く続くと怖いし、そろそろ不幸がやってくるような気がするのだ。
秋本は自分の首にもペンダントをかけ、2人のペンダントを合わせるとハートになった。それを見たゆり子は笑顔を見せた。今日はずっと笑っていた。
そして、また手を繋ぎ、歩き出した。
「ここで、お茶でもしようか?」
「はい」
そう言うと車が通る大通りに面したオープンカフェに2人は入り、ウエイトレスの案内で、外の通りに面した席に着いた。時間は昼の11時頃。太陽はもう頭上に上ろうとしていて、日差しがキツく、今年は暑い年だ。太陽の光を浴びて山も綺麗な緑を見せ、空の青さも一段と綺麗だった。大通りの車の通りも激しく、人の通りも激しかった。これだけ活気があると、動きたくなってくる。
ここで2人はアイスコーヒーとケーキを頼んだ。
「また花火大会があるね」
「はい」
「またみんな誘って、ホタル見に行ったり、温泉に行きたいね」
「行きたいです」
「去年は、みんなでスパワールドに行ったな」
「あっ、大阪の温泉?。私まだ行ったこと無いので行きたいです」 そしてまた沈黙が流れ、気まずい雰囲気が流れた。喋ることが無くなった秋本は下を向いてアイスコーヒーをすすった。
秋本が下を向いてアイスコーヒーを飲んでいる頃、ゆり子は外の人通りをボーと眺めていた。そして不幸は突然やってきたのだ。人の激しい往来の中に、麻紀と亜衣の姿を見つけ目があった。それを見た、ゆり子は驚きを隠せずには居られなかった。
なぜこんな所で偶然に会うのか。偶然にしてはできすぎている。出会わなければ、麻紀と亜衣には判らなかったはずだ。同じ時間、同じ場所で出会うなんて1万分の1くらいの確率だ。しかしゆり子は薄幸な運命を背負っていたために運の悪い偶然が起きてしまったのだ。
麻紀と亜衣は少し離れた所の陰に立ち、ゆり子をジーと見ていたのだ。ゆり子は、その突き刺すような視線に耐えかねて、視線を外した。そして恐怖と緊張が走った。麻紀が秋本の事が好きなのを知っていたからだ。まさかこんな所で出会うなど思っても居なかった。そして麻紀のコソコソ話す声が聞こえた。
「可愛い顔して、あの子、結構やるわね」
ゆり子はそれを耳にしたとき、冷静を装いながらも、顔面蒼白になり、笑顔が消え、顔がひきつり出した。秋本は、そのことには気づかずアイスコーヒーを飲んでいた。
麻紀はゆり子を睨むようにして見た後、足早に、その場を去っていった。
秋本が顔を上げたとき、顔面蒼白のゆり子を見て、驚いた。
「どうしたの?」
「あ、いえ」
小さく言って黙ってしまった。
「体の調子でも悪いんじゃない?」
その後、ゆり子から笑顔が消え、秋本が話し掛けるが、返事は無かった。
2人はイタリアンカフェを出、商店街を歩いていても、ゆり子は下を向いたまま、笑顔はなく、とぼとぼと歩くようになった。最初の笑顔は嘘のようだ。秋本もゆり子の様子が変わったことに不思議に思うが、理由が分からなかった。
「次、何処行こうか?」
秋本が嬉しそうに言ったが、その後のゆり子の言葉に驚いた。
「私、帰ります」
とゆり子は静かに言うと、秋本の返事を待つ前に、秋本とは反対の道を歩き、駅に向かって走り出した。
「え、どうしたの?」
秋本はゆり子を追っかけて聞いた。しかし返事はなく、ゆり子は秋本を無視して、静かに、とぼとぼと歩いて帰った。ゆり子は、これから2人で楽しくすごく気分にはなれなかったのだ。
取り残された秋本は、何か嫌がる事したかな。そう思いながら、思考を巡らしたが判らない。秋本も次第に暗い表情になり、気持ちが晴れないので、気持ちを紛らわすように辺りを暫くブラブラした後、帰った。
秋本は家に着いてからも、ゆり子の事を考えていた。
「何が悪かったんやろ?嫌われる事してしまったんかな?」
服を着替えながら考えていた。着替え終わると携帯を持ちながら聞いてみようか考えた。そしてダイヤル押そうか悩み、暫く考えて携帯を置いた。
「もしかして、嫌われたんかな?!」
そしてベットに寝そべった。
その頃、ゆり子は電気も付けずに、ベットにうつぶせに寝ころび、今日のことを考えていた。
「可愛い顔して、あの子、結構やるわね」
麻紀の言葉が思い出されて、目からは涙が流れていた。
「私は幸せになっては行けないのよ。何か幸せが来ると、すぐにダメになってしまう。お母さん助けて」
そう言うと涙が止まらなくなり、そのまま眠りについた。枕は涙で濡れていた。
深夜、秋本のアパートの周りは、夜の闇に包まれていた。部屋の中に外灯の光が微かなに入って来てくるのみだ。
そこで秋本は深い眠りにつき、夢を見ていた。目の前に崖が現れ、そこに1人の女性が近づいてきた。辺りは真っ暗だった。よく見るとゆり子だ。ゆり子は崖の上に立ち、下を眺めている。20mくらいはある断崖絶壁で、波が岸壁に激しく当たり、水しぶきを散らしていた。何度も波が岸壁に激しくぶち当たっては、砕けるのが見えた。
秋山は、それを冷静に見ていた。そして次の瞬間、ゆり子は崖から飛び降りた。吸い込まれるように海に向かって落ちていき、暗闇に消えていった。
秋本は目を覚まし、汗びっしょりになっていた。冷房もなく扇風機もないせいもあるが、しかし異常に汗をかいていた。辺りを見ると、真っ暗だったので、時計を見ると短針は3時を指していた。
「今の夢は何やったんや!」
そして不安になって眠れなくなった。昨日の彼女の様子といい、夢といい、思考を巡らすと眠れ無かった。次第に外は青みがかり、日が昇りだした。明るくなってくると、秋本は欠伸をした。しかし夏休みの期間、短期でアルバイトをしているので、もう寝ることが出来ない。眠さを吹き飛ばす為に、風呂に入って湯船に浸かり、風呂の中では、コクリコクリと船をこいでいた。
「危ない!」
風呂の中で寝ていたことに恐怖を感じ、すぐに出た。時計を見て、もう8時になっていたので慌てて着替え、軽く朝食をとると、歯を磨き、顔を洗い、家を飛び出した。また欠伸をしていた。
「変な夢見たな」
もう一度、声が聞きたくて、
ダイヤルをする。
長い夏休み、会えない私。
ダイヤル押しながら、
手が震えていた。
早起きしたデートの日、
服を選びながらの、
さり気ないお洒落。
緊張がピークに達した映画館。
ハッキリ覚えてない映画のシーン。
2人で買ったお揃いのペンダント。
全てがいい思い出。
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9へつづく |
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