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バスで摩耶ケーブル下、入り口まで向かった。バスの中はサークル仲間で一杯になり、騒がしかった。
「今日晴れて良かったね」
「天気予報で雨って言ってたから心配してたよ」
「ほんと」
「私、サンドイッチ作ってきたんだけど上手くできてるか心配」
今回は美帆が弁当を作る番だったので心配していた。
「そんな事、心配しなくていいよ」
「サンドイッチだから失敗する事少なくないと思うんだけど」
亜衣が慰めてくれたが、美帆も、それほど心配はしてなかった。
「騒がしいぞ。周りの人に迷惑かけるなよ」 人が多い上、3年生の女の子が、ざわざわしていたので、小林は注意をしたが、女の子達は聞いてなかった。
ゆり子は大人しいのと、先輩に対しての遠慮で、話の輪に入ることは出来ず、1人ポツンと静かに立っていた。
バスはケーブル下間近に来て、カーブを曲がったとき、3年生たちは更に騒がしくなった。
「わ!、綺麗」
3年生が一斉に騒がしくなった。女の子だけではなく、乗客みんなが一斉に騒がしくなった。バスは摩耶ケーブルの下の、国玉通、薬師通、五毛通、高尾通の3丁目、4丁目の間の桜トンネルに差し掛かったのだ。狭い道路の両側には400mほどに渡って、桜並木が続いた。桜はまっすぐ立っているのばかりではなく、道路の方に斜めに伸びているのもある。それを避けながら、この狭い道をバスが通過した。
女の子たちが騒ぐのも無理はない。桜は満開だった。そしてバスの中は、今まで以上に騒がしくなってきた。
「きゃー、ぶつかる」
斜めに伸びた桜の木を避けながらバスは、北へ向かって進んだ。
「大丈夫やで。運転手は慣れとんやから」
興奮している女の子を横に、男は冷めていた。
桜並木を通り過ぎ、左に曲がると、すぐの所がケーブルカー乗り場になっている。
ケーブルカーの中では男と女は別れて座り、女の子の方は依然と騒がしかった。
「ケーブルカーに乗るなんて子どもの時以来よ」
「私、初めて乗った」
「えー、ほんと?」
相変わらず女の子の会話の中に、ゆり子は入る事が出来なかった。
ケーブルカーで5分ほどで虹の駅に着いた。そこでロープエーに乗り換え、星の駅に向かた。
ゆり子はポツンと静かにしているのに、麻紀は気を遣い話しかけた。
「秋本君、かっこいいよね?」
「ゆり子さんは、誰が好きなの?」
その言葉に対しても、ゆり子は恥ずかしそうにして何も答えなかった。女の子には珍しいくらい大人しい。ただ恥ずかしい表情を浮かべるだけだった。
「ゆり子さんって、本当に大人しいね。私たちに遠慮しなくていいのよ」
亜衣も、ゆり子が遠慮していると思って、気を遣った。
星の駅に着くと、女の子たちが一斉に走り出した。
「わー、綺麗」
全員がかけだした。そこは高台になっていて見晴らしがよく、神戸の街と海が見渡せた。ちなみにそこの掬星台は日本三大夜景の1つに数えられている。
女の子の後を、ゆり子と男達が続いた。
「ここの景色、綺麗やな。夜景も綺麗なんやろな」
「そら日本三大夜景の1つやからな」
「えー、そうなんや」
「でもゆり子さんの綺麗さには負けるよな」
小林はポツンと1人で寂しそうに立っているゆり子に気を遣った。小林の言葉に反応し、少し小林の方を見てニヤリとしたが、またすぐ寂しそうな表情を浮かべた。
「ゆり子さんって、何か陰があるよな」
高橋は、ゆり子に気を遣うことなく喋った。
「でも、そこが好きなんやろ」
「やめろよ」
小林の言葉がゆり子に聞こえているので、秋本は恥ずかしそうにした。
「あれがうちの学校かな」
「どれどれ」
「ほら、あの茶色の建物」
「あー、そうだ」
女の子達がはしゃいでいた。神戸の海もキラキラ光っていて、国道の桜もよく見えた。
掬星台からの景色を満喫すると、みんなではしゃぎながら、近所をゆっくりと歩いた。男の子のグループと女の子のグループに分かれ、その間をぽつりと1人でゆり子が歩いている。そんなに広い敷地ではないので、1周ぐるっと回っても時間はかからなかった。
近くの公園が見えたとき、女の子達がはしゃいだ。
「あ、あそこの公園で昼食にしよ」
「そうしよ。丁度お腹空いていたの」
地面にレジャーシートを広げ、そこにみんなで座った。
「サンドイッチ作ったんだけど、みんなの口に合うかな」
美帆は恥ずかしそうに、男達に言った。
「美味しそうだよ」
小林は言った。
そのとき、ゆり子は秋本の隣りにさりげなく座っていた。
「ほら、お前の隣りに座ってるぞ」
小林が秋本の耳元で喋ると、秋本は照れていた。
「なになに」
麻紀が興味津々で聞いてきた。
「何でもないよ」
小林は麻紀を退けた。小林は麻紀が秋本の事が好きなのを察知していたからだ。ゆり子の寂しそうな顔を見ると、なぜか幸せになって欲しい、秋本となら上手く行きそうな感じがしたので、2人がくっつくと言いと感じていた。
サンドイッチはハムチーズ、卵サンド、ベーコン、レタス、トマトのサンド、ピーナツサンド、カツサンドと盛りだくさんだ。美帆が心配しているほど料理は下手ではない。本を片手に一生懸命、作ったのだ。
「美味しいよ」
麻紀が励ました。それにつられて、みんなも一緒に励ました。
「食事、終わったらみんなでバトミントンしよ」
「道具持ってきてるの?」
「当たり前やで」
小林は、ちゃんと遊び道具を用意していた。
「準備いいね」
食事が終わると、みんなで楽しくバトミントンをした。そしてロープエーとケーブルカーを利用し、またバスに乗り、桜トンネルを通り、もと来た道を帰っていった。
全が新鮮だった。
綺麗なキャンパスも、
大学生活も、恋愛も、
神戸の風景も。
全てがピンク色だった。
夙川も、摩耶山も、
山手幹線も、桜トンネルも。
そして秋山さんとの出会いも。
全てが楽しかった。
勉強も、
キャンパスライフも、
サークル活動も。
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5へつづく |
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