TOP > 小説 > ラビアンローズ

17

 

 1ヶ月後、パパは病院を退院した。退院のときは千絵も迎えに行き、嬉しそうにしていた。すっかり昔の明るさは戻っていた。パパと会えたことで全てが解決した。亜紀子に頭を下がると、亜紀子もニコニコして頭を下げた。

「今までどうもありがとう。自殺未遂の後、亜紀子が居たから、私は生きて行けたし、パパにも会えた。もし亜紀子に出会ってなかったら、どうなっていたことか。想像しただけで涙が出てしまう。本当に亜紀子には感謝している」

 千絵は泣きながら感謝の気持ちを述べた。

「もう泣くのやめたんでしょ」

 亜紀子は笑いながら言った。

「うん。でも今日だけは、亜紀子に本当にお礼を言いたいから、今日だけは泣かせて」

 それを聞きながら亜紀子ももらい泣きしていた。そばにいたパパも泣いていた。

 亜紀子や周りの看護婦に頭を下げて、お礼を言うと、千絵とパパは病院を後にした。

 

 翌日、パパの車で千絵の荷物を積んだ。荷物と言うほどの荷物はない。亜紀子に買って貰った服くらいだ。亜紀子も見送りに車の側まで来ていた。

「今まで有難う。このお礼はいつか、きっとするから」

 そう言うと千絵と亜紀子は両手でしっかり握手した。

「良かったね、パパに会えて。本当に良かった」

 亜紀子は泣きながら言った。

「うん」

「私の事忘れないで友達にいてね」

「当たり前よ。また落ち着いたら、うちにも遊びに来て」

 2人は別れを惜しむようにした。千絵が車に乗り込むと、車は走り出しが、千絵は身を乗り出して、亜紀子が見えなくなるまで、大きく手を振った。またパパと一緒にアパートで暮らせる。一緒に暮らせるだけで嬉しくて、最高の幸せだった。千絵は贅沢など何も望んでいなかったのだ。パパとは二度と会えないと思っていたのに、また会えた。それもこんなに早く会えたのだ。千絵は嬉しくてたまらなかった。

 パパは、それほど遠くない所に住んでいた。5分ほど進んだ所で車はとまった。

「パパの家どれ?」

「目の前だよ」

「えー!」

 千絵は腰を抜かさんばかりに驚いた。目の前には大きな門構えが見え、100坪はある庭の奥に、50坪くらいの家が建っていた。

「冗談はやめてよ」

「本当だよ」

 千絵は信じてなかった。なぜこんな豪邸に住んでいるのか。

「じゃ、何で今まで迎えに来てくれなかったの。どんなに私がパパの事心配したか」

 千絵は泣き出した。

「ご免、これには事情があるんだ。パパは最近、社長になって、この家を譲り受けたんだ。そして後藤家に千絵を迎えに行ったら、もう出た後だったんだ。行き違いになったみたいで」

「でも、もっと早く来てくれても良かったんじゃない」

「成功するまでは、千絵に顔向けできないと思ってたから」

「そんなのいいのよ。私の望みはパパと一緒に暮らす事だけだったのに。どんなに私がパパの事心配したか判る?」

 また泣き出していた。

「本当の事言うと、そんな事考える余裕がなかったんだよ」

 またパパが続きを喋った。

「どういう事?」

 千絵は自分はパパの事ばかり考えていたのに、パパは自分の事を忘れていたみたいに言われたので、怒った。

「パパは借金を返す事と、成功して千絵を迎えに行こうと、そればかりを考えていて朝もなく夜もなく働き続けたんだ。そして最近、やっと借金も返す事が出来、気づいたら15年が経っていたんだ」

「そうだったの?」

 千絵はパパの気持ちを知って驚いた。

「とりあえず中に入ろう」

「うん」

 千絵は涙を拭き、笑顔になり、嬉しそうに頷いた。

 大きな門扉を開くと、車ごと中に入った。後藤家も広かったが、それ以上に広い。車を敷地内に停めると、積んだ千絵の荷物を家に運んだ。

 建物の扉も大きく、綺麗に装飾され、重厚な感じがした。扉を開けると、6畳くらいありそうな大理石の玄関、その奥は20畳あるリビングで、真っ赤な絨毯が敷かれていた。リビングの中程には螺旋階段があり、2階に繋がっているが、階段も豪華な作りで、まるでヨーロッパのお城のようだった。

「パパすごいね」

 あまりの豪華さに、驚いた。

 リビングの奥にも部屋はあった。その10畳くらいある部屋に通された。

「この部屋は、お前にあげるよ」

「えー、嬉しい」

 千絵は暫く、その部屋を眺めていた。今は何もないガランとした部屋だ。パパを待っていて良かった。こんな幸せが待っていたなんて考えても居なかった。辛い人生を送った分、その分幸せとなって返って来たのだと思えた。

 夕食の時間、ダイニングのテーブルにはにぎり寿司に、刺身、魚介類などが食べきれないほど並べられていた。

「すごい、ご馳走じゃない」

「今日は、千絵と再会したお祝いに、板前を呼んで、作ってもらったんだ」

 久しぶりのご馳走に喜んだ。亜紀子と暮らしているときは、いろいろおごって貰っていたが、お金がないので安いもので過ごしていた。千絵はテーブルに並べられているお寿司を一口食べた。

「美味しい。今まで味わったことのない味よ」

 その後、あっという間に20カンを平らげた。

「美味しいかった」

 しかし、まだ食べきれないくらいのお寿司などが残っていた。お腹が膨れた千絵は、思い出したように言った。

「パパと再開できるなんて夢のようだわ。本当に夢じゃないのね」

「ほっぺたつねろうか」

「それにこんな豪邸に住むなんて想像もしてなかったわ。私はパパと一緒に暮らす事だけを願っていたから、住む所なんかどんな所でもよかったのよ」

 

 2人が楽しそうに話していると、インターホンが鳴った。

「誰だろう。パパの会社の友達かな?」

 パパはインターホンで話しした後、玄関まで迎えに行った。暫くすると、お客さんを連れて上がってきた。そして驚いた。後藤家の3人だった。千絵は一瞬緊張した。しかし後藤家のパパは、千絵にニコニコながら近づいていた。

「この前はご免ね。せっかくの好意を無にしてしまって」

 そう言うと土下座をしたので、千絵は慌てて立ち上がった。

「何も気にしてないです。頭を上げて下さい」

 焦って何度も同じ事を言ったが、パパも頭を下げることをやめない。次にママが言った。

「今日は、いろいろ謝りたい事とかあって来たのよ。この子がね嘘を付いていたのよ。全部この子から聞いたわ。嘘を付いて、松本さんをあなたから奪ったって知らなかったから」

 後ろでばつ悪そうに彩子が立っていた。

「早く謝りなさい」

 ママは彩子に促した。

「ごめんなさい」

「そんな謝り方ないでしょ。この子の人生狂わしたのよ」

「ほんとごめんなさい。謝って済むことではないことだけど、許してくれない」

「嘘って何ですか?」

 そこに千絵のパパが口を挟んだ。彩子は言いにくそうに言った。

「千絵はわがままだとか、千絵のパパは殺人犯だとか言ってしまったんです」

 彩子はボソボソ言い、千絵は初めて聞く話に驚いた。目には涙を浮かべ怒っていた。

「だから松本さんは、私を避けるようになったのね」

「こないだ私たち離婚したの。本当は彼の事、そんなに好きでない事判ったの。千絵とつき合っていたから、欲しくなっただけなの。ご免なさい」

 千絵のパパはその場の嫌な空気を拭うように言った。

「もう、そんな事いいんですよ。こっちこそお礼を言わないと行けないんです」

 その言葉に千絵はハッとした。

「そうだお礼を言わないといけないのは、私の方です。私を長い事育てて下さって有難うございます」

 千絵は頭が床に着くくらいまで土下座した。そして泣き出した。

「もしあのとき私を育ててくださらなかったら、私は今頃どうなっていたか。たぶん死んでいたと思います」

「感謝されるほどの事はしてないわ。あなたは本当の娘じゃないので心の底では、どこかに一線を引いて接していた所があったわ。あのときもっと愛情を持って、接してあげていたらと、今になって後悔してるの」

 ママは泣いた。千絵も泣きながら言った。「育てて貰えただけでも感謝しています。それに大切な結婚式をぶち壊しにした事ごめんなさい」

「身から出た錆よ。松本さんを奪った事は、どんなに謝っても謝りきれないわ。・・・ご免ね」

 彩子は、最後にボソッと謝った。

「まー、それくらいにして、今日はパーと飲んで、嫌な事は忘れましょ」

 そう言うとパパは奥からワインを持ってきて、グラスにワインを注いだ。

「お互い若いことだし、これからいくらでもやり直しがきくんだし。取りあえず乾杯しましょ。お前、乾杯の音頭をとれよ」

 パパは千絵に言った。

「今までどうもありがとうございました。今日のお互いの最スタートを祝して、乾杯」

「乾杯」


 5人は一斉にグラスを重ねた。

「今までのお互いの嫌な事は、今日をもってきっぱり忘れて、これからは仲良くやりましょ」

「賛成」

 千絵のパパの言葉に、みんな笑顔に変わった。笑顔になった千絵は、ワインを、ぐっと一気に飲んだ。

「今日は最高の日になりそうだ。こんな日が来るとは夢にも思って無かったです」

 千絵は終始、笑顔を見せていた。他の4人も嬉しそうにしていた。

「あ、そうそう。大事な事を忘れていたわ」

 ママが千絵の方に向いて言った。

「何かしら?」

「これ返さないと」

 千絵はきょとんとした顔で見ていた。ママが鞄から取り出したのは、貯金通帳だった。

「この前の、お金有難う。何とかなって、会社も立ち直ったの。だからこれ返すわ」

 差し出された通帳には千絵の名前が書かれいた。中を開くと1億の数字が刻まれていた。それを見て、千絵は目をぱちくりさせた。

「1円も使ってないじゃないですか?」

「他の所で予想してない収入が入ったので必要なくなったのよ」

「じゃ会社は、潰れてないのね」

「うん、そうよ」

 千絵が喜ぶと、ママも喜んだ。

激安ドリンク、箱買い、まとめ買い(コーヒー、紅茶、炭酸、スポーツドリンク、ジュース、水、酢、栄養ドリンク)
 1缶50〜80円くらいの激安ドリンクを始め、安い商品が多数あります。破損時の返品代引き決算(着払い)もありますので、安心してご利用ください。休日、買い物に行く時間も省け、重い物を運ばなくても、家まで持ってきてくれるのも、嬉しいですよね。




18へつづく