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14

 

 翌朝、ヘンリーが目を覚ますと、雪はやんでいて、寒さも収まり、セスナ機の割れ目に光が射し込んでいるのが見えた。

「生きていたぞ」

 ヘンリーは自分が生きていたことに喜んだ。しかしケントの次の言葉に、凍り付いた。

「ポール、起きろ。ポール」

 ケントは震える声で、叫んだ。ただならない様子にロバート、トム、ヘンリー、トーマス、機長は駆け寄って見るが、ポールは既に冷たくなっていた。

「ポール、ポール」

 ケントは泣いた。

「このまま1人ずつ死ぬんだ。次は俺の番かもしれない」

「これも全て、機長のせいだ」

 またケントは機長に殴りかかろうとした。それをトムとヘンリーは止めに入った。

「やっぱり無理だ。こんな山の中に救出が来るわけはない。俺は下山する」

「だめだここで下山すると、遭難してしまうぞ。もう少し待とう」

 機長は必死に止めた。

「どうせここにいても死ぬんだ。下山させてくれ」

「NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP」

 機長は必死で何度も訴えた。

 

 そのとき映写機がカラカラ音を立てだし、映像が乱れ、最後には映像が止まってしまった。

 映画館はざわめいた。

「どうしたんだ、終わったのか?」

 5分くらいした後に看護婦が舞台に上がってきた。

「申し訳ございません。映写機が壊れたので、暫くお待ちください」

 場内はざわめいたが誰も帰ろうとはしなかった。恭子もさっきのポールの死が気になり、先を見たくて焦っていた。このまま中止になっては絶対、嫌だった。

「こんな所で,終わるのか?この先が気になって寝れないじゃないか」

 と怒っている人もいる。そして、友達どうしで、映画の続きについて口々に喋っていた。

「ポールが死んで、1人ずつ死んでいくのよ」

「いや、ポールは本当は死んでないのよ」

「この後、救助が来て、助かるのよ」

「本当に、このままみんな助かるのか?」

 15分くらいしたころ、また看護婦が舞台に上がってきた。

「申し訳ございませんでした。映写機の方、直りましたので、続きを、ごゆっくりご覧ください」

 恭子はふっと胸をなで下ろした。

 

「もう10日も経っているんだ。捜索は打ち切られているはずだ。俺たちは見捨てられたのだ」

 ケントは怒鳴り、何時殴りかかるかトム、ヘンリー、トーマスはハラハラしていた。それでも機長はめげずに言った。

「NEVER GIVE UP」

「馬鹿の一つ覚えみたいにNEVER GIVE UP NEVER GIVE UPって」

 その言葉に腹を立てたのかケントは機長に殴りかかった。それでも機長はめげてなかった。

「NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP」

 何度も繰り返した。

「どうして俺に殴りかからないんだ」

 ケントが機長に言った。

「ここで、みんなが殴り合っても仕方がないことなんだ。みんなを救助するのが俺の指名なんだ」

 その言葉にケントは大人しくなった。

「捜索が打ち切られたとしても、俺たちは救助を信じて待つしかないんだ」

 機長が言った。

「食料も見つけないと、俺たちは死んでしまう」

 そう言うと、機長はトムとロバートに獲物を取りに行くように命じた。

 トムは猟銃を肩に掛け、嫌がるロバートと一緒に獲物を探しに行った。雪山に獲物など居るはずもない。しかしこの考えが間違えていたことを、最悪の事態で知ることになった。ロバートは嫌々ながら、少し距離を置きトムの後を付いていった。

 獲物を探しに1時間ほど歩いたが、同じ風景が続くだけで、見つからない。ロバートは疲れ、石の上に座り込んだ。トムも疲れたのか、少し離れたところで座った。ロバートは相変わらず疲れ切っていて、もう動けないと言った感じだ。

「やっぱり、雪山には獲物なんかいないか」

 トムは残っていたたばこに火を付け、煙を燻らせていた。2−3回口から煙を吐き出し、たばこを口から離し、息を吐き、リラックスした所で、ふとロバートの方を見た瞬間、トムの顔は凍り付いて、最後の1本のたばこを落としてしまった。それは驚愕する事態だった。ロバートの真後ろに巨大な熊が両手を上げ、今にも両手を振り下ろそうとした体勢で立っていた。それにロバートはまだ気づいていない。トムは叫ぼうにも声が出ない。熊は上げていた両手をロバートめがけて振り下ろした。その刹那(せつな)、ロバートの頭から血が噴き出し、叫び声が木霊(こだま)した。ロバートは慌てて大きな岩陰に逃げたが、このことが原因で、最悪の事態へと進行した。トムは猟銃を構えたが、ロバートと熊は岩陰に隠れて撃てない。そしてロバートの叫び声だけが木霊する。トムは近付いて熊に照準を合わせたが、次の瞬間、また岩陰(いわかげ)に隠れた。慌てたトムは更に近付いて、熊の頭めがけて猟銃を2発、発射させた。熊は血を吹き出し、その血が雪を染め、その巨体は倒れた。慌ててロバートの所まで駆け寄ると、ロバートの顔の肉は半分えぐり取られ、目が飛び出し、肋骨がむき出しになっていた。辺りの雪は血で染まっていて、あまりのむごたらしさに驚愕した。

「キャー」

 恭子は、あまりの悲惨な映像に目をそらした。

「ロバート、ロバート」

 トムは何度も何度も、名前を呼んで泣いた。

「俺がもっとちゃんと見ていれば、こんな事にはならなかったのに。本当にごめん」

「俺は何て事をしてしまったのだ」

「どうしよう、みんなに何て謝ったらいいのか」

 トムは後悔の念でロバートの前を1時間あまり離れることが出来なかった。

 

 1時間ほど泣いた後、トムは静かに立ち上がった。

「ここは、みんなの為に、食料を持って帰らないと」

 そう自分に言い聞かせると、熊の足を引きちぎった。道具を持っていないので足を引きちぎるのに1時間も格闘した。残りは明日取りに来ればいいと思った。何せ自然の冷凍庫があるので腐ることはなかった。

 トムは熊の足を引きずりながら、とぼとぼとした足取りで戻ってきた。それを待っていた、みんなは拍手で迎え入れてくれた。しかしトムは嬉しくなかった。

「みんな、ごめん」

 みんなの顔を見た瞬間、トムは泣き出した。

「いったいどうしたんだ。食料もって帰ったじゃないか」

「ロバートが死んでしまったんだ」

 その言葉に、みんなは静まりかえった。

「熊がロバートに襲いかかり、ロバートは死んでしまったんだ。助けようとしたが、助けれなくって。俺が悪いんだ、俺を責めてくれ」

「トム、気にするなよ。仕方なかったんだろ」

 ヘンリーが慰めてくれたが、ケントはトムに掴みかかった。

「何言っているんだ。何でロバートを殺したんだ。前にも言った通り、俺たちは1人ずつ死んでいくんだ。次はお前かも知れないぞ」

 トムは何も言い返す事が出来なかった。ケントも絶望感で立ち上がることが出来ない。

 機長がなだめ、熊の足をみんなで食べた。残ったのは機長、ケント、トム、ヘンリー、トーマスと5人になってしまった。このときは暗い食事となった。空腹は癒せたが、不安感はぬぐい去ることが出来なかった。更に機長の言葉に、みんなは恐怖を感じた。

「熊がいたという事は、まだ別の熊がいるかもしれないな」

 この言葉に、みんなは震え上がった。

 恭子も意外な方向に話が進んで行くことに、恐怖を感じた。

 次の日、みんなは暗い表情で熊の残骸を捕りに行き、そのとき見たロバートの惨(むご)さに、恐怖の色を隠せなかった。顔も体もグチャグチャになり、内蔵が飛び出していた。それを見て、吐く者もいた。

「俺たちも、お腹空いていたけど、この熊もお腹空いていたのかも知れんな」

 ヘンリーは、何か切ない気持ちになった。

「熊も食料を探しに、必死だったのかもな」

 機長がボソッと言った。

 

「ロバートが犠牲になったお陰で、熊をしとめることが出来たんだ。ロバートに感謝して食べよう」

 機長がそう言うと静かに食べた。トムとヘンリーは、あまりの美味しさに、涙を流しながら食べた。腹は満たされるが、何かやりきれない気持ちだ。どうして、救助に来てくれないんだ。何処にぶつけていいか判らない怒りを、抑えるのに大変だった。

 しかし救助が来ないのには理由があった。機長が全員を助けようとし、航路から数十キロもはずれ安全な所に着地したから、見つけることが困難となったのだ。

 巨大な熊は数日間、5人の胃袋を満たしてくれたが、それからまた食べれない日が続き、ケントは空腹を訴えた。

「ポールとロバートの死体を食べよう」

 ケントの発言は、みんなを驚かせた。

「それは人間として、してはいけないことだ」

 トムは怒った。しかしトーマスは意外なことを言い、トム、ヘンリーを驚かした。

「俺はケントに賛成だ。熊を食べたように、ポールやロバートを食べてもいいんじゃないか」

「トーマスが、そんなことを言うとは思わなかったよ」

 ヘンリーが言った。

「みんなも腹がへっていると思うんだ。このまま、みんなが飢え死にするよりは、死体を食べて、ポールとロバートの分まで生きないといけないのではないか」

「気持ちは判るが、そこまでして俺は生きようとは思わないな」

「ポールとロバートも判ってくれると俺は思う」

 ヘンリーの言葉にトーマスは反発した。

「争い合っていたが、俺たちの仲間だぞ。それを食べると言うことは、人間として反した行為だ」

「しかし緊急避難という法律もある。現在の危難を避けるため、やむをえずに行った加害行為は法律でも認められているんだ」

「法律で認められていようが、その行為は人間としては最低の行為だと俺は思う」

 ヘンリーとトーマスの言葉は平行線を辿り、どちらも自分の意見を譲ろうとしなかった。ケントが一言言った言葉が、これほどになるとはケントも思っていなかった。このままいっても話は交わらないと思ったトムは、2人に言った。

「俺は、どちらの意見も正しいと思う。俺も、どちらがいいか決めかねている。そこでどうだ、他人任せで無責任なような気はするが、機長に決めて貰い、それで、その意見に従おう。ヘンリー、トーマス、ケントいいか?」

「俺はそれでいい。機長がどんな意見を言おうが、恨まない」

 トーマスは言った。

「ヘンリーもいいか?」

「俺もそれでいい。ここで言い争う話ではない」

「おれもいい」

 ケントも仲間を2人亡くし、すっかり落ち込んでいた。

「機長もいいですか?」

 トムは機長に聞いた。機長は頷くと、話し始めた。

「俺は救助を信じている。事故から、もう既に1ヶ月が過ぎている。しかしいつか救助に来てくれると俺は信じているし、希望を捨てたことは1日もない。そして救助が来たときは、ポールとロバートもそのままの状態で故郷に連れて帰してあげたいと思う」

 ヘンリーとトーマスは静まりかえった。なんとレベルの低いことで言い争いをしていたのだと情けなく思った。更に機長の言葉は続いた。

「俺は誰も犠牲者を出さないと言ったが2人も犠牲者を出してしまった。このことはポールとロバートに申し訳なく、悔やんでも悔やみきれない気持ちで一杯だ」

 そう言うと機長は泣き崩れた。

「1ヶ月間食べないでも大丈夫と言っておきながら、空腹感を感じたことに情けなく思う。だから俺は、食べないでも平気だ」

 

 そして、この機長の決断は正しかったのだ。これが後々の幸運を呼ぶことになろうとは、このとき誰も気づいていなかった。

 機長の言葉に感動し、その後は誰も空腹感を訴える者は居なくなった。黙ってみんなで木を取りに行き、斧で小さく切り、薪を作った。ケントはポールとロバートが死に、仲間がいなくなり、不安になっていた。そして次に死ぬのは自分の番だと思っていた。その気持ちがあだとなり、ケントは憂鬱な気持ちで、やる気なく仕事をしていた。そのときだった、

「ぎゃー」

 ケントの叫び声が響いた。次の瞬間、ケントの周りに、みんなは集まった。

「どうしたんだ!」

 見ると、斧で手を切っていて、みんなをヒヤリとさせた。血が出ていたが、大声で叫んだほどの傷でもなかった。

「これくらい大丈夫だ。俺が縫ってやる」

 トムが諭した。よく見ると、切り口はパックリ開いていて、中から血が出ていた。トムはケントを火の近くまで連れて行き、トムがたまたま持っていた針と糸を用意した。針を炎であぶり、殺菌し、ケントの手の切り口を縫い始めると、トムの叫び声が木霊した。

「叫ぶな、これくらいのことで」

 トムは、叫ぶケントの腕を20針縫った。

「終わったぞ。大したことじゃないぞ、まだ生きてるだろ」

 

 その夜、ミーティングが開かれた。5人は炎の前に集まり、機長を取り囲んだ。

「みんなに言いたい。絶対希望を捨ててはいけない。捜索は打ち切られているかもしれないが、いつかきっと助けは来てくれる。NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP」

 機長は口癖のように何度も言った。そして、この言葉の裏には非情な思いが込められていた事を、他の4人は後で知ることになる。

 恭子も画面を凝視し、手には力がこもっていた。

「頑張れ、頑張れ」

 自分のことのように、応援したくなった。

「絶対死んではいけない、生きて帰るんだ」

 そう力強く思った。

 ケントは怪我した手をかばいながら、震えていた。

「俺は恐いんだ。俺は死にたくない」

「もう誰も殺させない。ポールとロバートの次の犠牲者は出さない」

 機長は力強く言った

「俺は死ぬんだ。次に死ぬのは俺だ」

 そしてケントの目からは涙が流れた。

「NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP」

 また機長はテープのように繰り返し唱えた。ケントはうなだれ、機長を殴りかかった昔のような元気は微塵もない。怪我した手が痛々しく、可愛そうに感じた。それを察してか機長はケントの目を凝視し、力強く言った。

「絶対、俺が死なせないから」

 ケントは静かに黙った後、その気迫に負け、

「判ったよ。信じて見る」

 と静かに言った。

 そして、このとき恭子はあることを思い出した。あれは桜の咲く頃、医院長先生が

「絶対、先生が死なせない」

 恭子の目を凝視し、力強く言った言葉を。あのときとそっくりだった。

 更に恭子は、ケントと自分の置かれている状況が近いことを感じ始めた。自分は死ぬかもしれ無い状況にある。しかし医院先生、看護婦、聡は「絶対死なせない」と言ってくれている。ところが自分は、誰に何を言われようが死ぬんだという気持ちを曲げようとしなかった。さっき映画を見ながら手に力を入れ、「頑張れ、頑張れ」と言っていたではないか。なぜ他人には、そう言えるのに、自分にはそう言えないのか。そして更にある言葉を思い出した。聡にチャペルで「病気は気だ」と言われた。自分はこれだけ応援されているのに、なぜそれに応えようとしないのか。自分が死ぬと思っている事は甘えだ。ケントだって頑張る気持ちが有れば助かるかもしれない。しかし頑張る気持ちを無くせば助かる可能性は低い。病気を治すのは医者の力だけじゃなくって、自分の力も大事なんだ。そう感じたとき、自分は何て考え違いをしていたのだ。恭子の目は涙で濡れていた。

 

 恭子は涙を拭きながら、映画の続きを見た。

 翌朝、ヒヤッとさせられる出来事が起こった。まだみんなが目を覚ます前の時刻だった。5人は外で寝袋に包まれ、炎の近くで寝ていた。そのときガサガサと音がした。音の主は、なんと熊だった。このまえトムが猟銃で倒した熊の仲間かもしれない。冬眠から早く目が覚めたので、餌を探し求めていたのだった。そんな危機が迫っている中、5人は眠ったままだ。

 そして、これから戦慄する出来事が起こった。3人目の犠牲者だ。熊はケントの寝袋の前まで近付いた。そしてケントの真後ろで巨体をもたげ、今にも両手を振り下ろそうとした体勢で立っていた。まるでロバートを襲ったときと同じ光景だった。熊の歩く音にロバートは目を覚ました。しかし寝袋にくるまっていて、逃げることが出来ない。周りの者は眠ったままでこの状況に気づいてない。ロバートは冷や汗を垂らしながら、自分の考えが正しかったことを確信した。

「もう駄目だ。やっぱり俺の順番が来たんだ。でも俺は死にたくない」

 頭の中は、目まぐるしく動いた。丁度、高い所から落ちるときコマ送りのように見えると言った証言のように、頭は目まぐるしく動いた。更にこの瞬間に、家族のこと、子供のときから今までの生い立ち、セスナ機が墜落してから、今までのことが思い出され、次の瞬間には、

「NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP。NEVER GIVE UP。・・・・」

 と呪文のように唱えていた。昔は機長に殴りかかったことが、何度もあった。しかし、その人の言葉が自然に出ていた。この時、初めて機長には、悪い事をしたと反省した。でも今頃反省しても、時既に遅い。

「もし、ここで奇跡が起こり、命が助かることがあれば、今までのことは反省し、これからの人生、小言は一切言わない。みんなと協調するし、生きるように努力する。お腹空いたなんて言わない。そんな事どうでもいいことだ。1ヶ月だって食べずに我慢してみせる。みんなとも仕事を頑張り、救助を待つよ。NEVER GIVE UP・・・」

 しかし、ケントの努力も虚しく、熊はケントに覆い被さって来るのが見えた。

「もう駄目だ」

 熊はケントを覆い隠した。ケントは目を開けていられず、思わず目をつむり、最悪の事態を想定した。体は動かないが、脳だけは激しく動いている。ここまで来て、助かるすべはない。俺もこれでおしまいだ。

 そして数十秒が過ぎた。熊の重みを体に感じるが、痛みは感じない。ケントはいろんな事を考えるが、熊の動きがないので、思い切って寝袋から出てみた。すると熊は既に死んでいた。

 ケントは自分の体を見て助かった事に気づいたが、どうして助かったのか判らない。熊は血を流し倒れ、ケントに覆い被さってきたのだ。離れたところでトムが猟銃を持っていた。そして、もう一度助かったと実感したとき、ケントはぶるぶる震えて、泣いた。ケントは自分は死ぬんだと思い違いをしていたことに情けなく思った。

 これを見ていた恭子も、自分のことと照らし合わせ、涙を流した。

「自分も生きないといけないのだ。絶対生きる。生きてみせる。NEVER GIVE UP。」

 そう確信し、自分は死ぬんだと思っていたことに恥ずかしくなってきた。

 

 4人は熊が捕れたことにすごく喜んだ。

「久しぶりの食事だ」

 そして食事の準備をし、朝から豪勢に肉を食べることになった。数日も食べてないので、シャブリついた。

 しかしケントは違っていた。今もなお震えていた。

「自分は何て思い違いをしていたんだ。みんな、ごめん。機長、俺が殴ったことを許してくれ」

 涙を流しながら訴えた。

「俺は思い違いをしていた。死ぬんだと、金輪際思うのはやめる。みんなと生きて帰るよ」

 トムはケントに泣くのをやめて、食事をとるように勧めたが、ケントは食べようとしない。

「俺はさっき誓ったんだ」

 ケントはボソッと言った。

「何を誓ったんだ」

 トムは聞いてあげた。

「熊が襲いかかろうとしていたとき、もし、ここで奇跡が起こり、命が助かることがあれば、今までのことは反省し、小言は一切言わないと」

 そう言った。

「俺も救助を信じるよ。みんなに迷惑かけて悪かった。許してくれ」

 ケントの涙は止まらなかった。

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15へつづく