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11

 

 病室には看護婦と恭子がいた。

「お姉さん、本当にありがとう。彼のこと取り持ってくれて」

「そんなこといいのよ。それより昨日は楽しかった?」

「それはすごく楽しかった。結婚式もあげたし」

「結婚式?」

「うん」

 恭子は笑顔で返事した。それにつられて看護婦も笑顔になった。

「私、これで思い残すことはないわ」

「また、そんなこと言って」

 看護婦は諭したが、恭子には何か気持ちの中で覚悟が出来ていたみたいだ。

「本当よ、願いは全て叶ったの」

 こんな事を話しても、きりがないので看護婦は話を変えた。明るくするためにした話に恭子は驚愕させられるとは、このとき思っても見なかった。

「隣の患者さん、どうなったか知ってる?」

「あの末期ガンの患者さん?」

 恭子は悪い結末を聞きたくなかった。脳裏に映ったのは、この前、背中を丸めて2人で部屋に入っていく元気のない様子だった。恭子は不安そうな目で、目をキョロキョロさせながら、聞いた。

「そう、そう」

「その人がどうしたの・・死んだの?」

 恭子の表情は強ばった。

「それが違うのよ」

「何?、何?」

 なかなか言わない看護婦に苛立っていた。しかし次の言葉に恭子は驚愕した。

「治ったのよ」

 恭子が、まったく予想してない答えだったので、動きが一瞬止まった。

「治ったの?」

 恭子は腑に落ちない表情を浮かべていた。

「治って退院したのよ」

「どうして末期ガンの患者が治ったの?」

 恭子は何が何だか、意味が判らなかった。

「それは看護婦の中でも、みんな不思議がってるのよ。医院長先生や看護婦はみんな最善の力を尽くしたわ。しかしそれだけでは片づけられない何かが有るみたいよ」

 恭子は鳥肌が立ってきた。もうすぐ死ぬんだとばかり思っていたのに、治ったと聞いて訳が分からなくなった。末期癌の患者が治るのか?恭子は狐につままれたような表情をしていた。

「あ、そうそう、明日映画があるのよ。恭子ちゃんも来て?」

 恭子は納得出来ないまま、脳裏では末期癌の患者がどうして治ったのか思考して、看護婦の話は上の空だった。

「これる?22階のAホールで昼1時からだから」

 恭子は上の空で、看護婦の質問の後、暫く沈黙が続いた。

「えー!。この病院に映画館有るの」

 恭子はやっと現実に戻り、突然大きい声を出した。

「22階のAホールで」

 看護婦は、恭子の声に驚き、静かに答えた。

「行く、行く。絶対行く」

 興奮していて、また大きな声になった。興奮で末期癌の患者のことは、一瞬にして忘れさられていた。

「映画なんて、久しぶり。明日が楽しみだわ。今から行って座っていてもいいの?」

「いいわよ」

 そう言うと、2人で笑った。しかしこの映画で恭子は奇跡を体験する事を、この時までは考えてもみなかったのだ。

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12へつづく