TOP > 小説 > 六甲の丘



 

 恭子は朝食を終えると料理番組を見るのが習慣だ。そして朝の時間を楽しんだ。今日のテーマはじゃがいもだった。じゃがいもの収穫は沖縄や鹿児島では1月、そのまま少しずつ北上し近畿地方辺りが4月、更に北上し北海道は8月となっている。だから新じゃがは、ほとんど年中ある。じゃがいもの種類で主な物は男爵、メークインで、男爵は北アメリカ原産、煮くずれしやすいので粉ふきいも、マッシュポテト、肉じゃがなどに向いている。それに対しメークインはイギリス原産で、煮くずれしにくいので煮込み料理、炒め物、揚げ物に向いている。じゃがいもの主成分はデンプンで、ビタミンC、カリウム、食物繊維が多く含まれている。そしてじゃがいものビタミンCは、デンプン質ががっちりガードしているので熱に壊れにくい。

 じゃがいもは水から茹でる。お湯から茹でると中まで火が通りにくくなるためだ。コロッケ、マッシュポテトなどじゃがいもを潰すものは、熱いうちに潰す。これはじゃがいもが冷めると潰しにくくなるため。その後コロッケ、マッシュポテト、肉じゃがの料理が紹介された。

 恭子は男爵の煮くずれた感じも好きだし、メークインの身が詰まった感じも好き。またホクホクしたじゃがいも好きで、焼き芋や北海道のジャガバターを思い出した。そしてジャガバターが売られている大通公園を思い出し、北海道の辺り一面紫のラベンダー畑、北海道の雄大な景色と順に思い出していった。今日の昼は絶対じゃがいも料理を食べようと誓った。影響されやすい性格だ。

 

 恭子と藤堂聡は病院の屋上に上がった。屋上は展望台になっていて、直ぐ目の前に神戸の街並みと海が見える。今日は天気がいいので、太陽の光で海の表面はキラキラしていた。空も自分の病室から見るよりも近くに見えた。顔を見上げたら、360度、雄大な真っ青な空が見え、雲がゆっくり流れ、吸い込まれそうな気がした。

 丘を切り開いた所に建っているので、周りに自然は多く、空気が綺麗だ。静かな所に時折、鳥のさえずりが聞こえた。

「ここの屋上、何て名前が付いているか知ってるか?」

 聡は自慢げに聞いてみた。

「屋上まで名前が付いているの?」

「うん。シーガーデン、て言うんだ」

「シーガーデン?」

「海が目の前に見えて、その海が庭のように見えるので、そうな前がついたらしい」

「へー」

 恭子は感心した。

「足、治ったのね」

「さっきギブス取ったんだ」

「じゃー、もうこの病院ともおさらばね」

 恭子は寂しそうな顔をする。

「恭子ちゃんも、もうすぐ退院なんだろ」

「うん」

 恭子は口ごもり、うつむいた。まさか自分は死ぬかもしれないと言うことを言えるはずもない。恭子を悲しい気持ちにさせたのは、もうすぐ退院と嘘をついたことだけではなかった。幸せだった思いもこれで終わりと言う気持ちもあったからだ。何時外出許可が下りるかも判らない。昨日まで幸せだったのに絶頂期から奈落の底に落とされた気分になった。恭子は顔を上げることが出来ず、うつむいたまま暗い表情を浮かべていた。しかし聡の次の言葉に、恭子は驚かされた。

「突然だけど、俺とつき合ってくれないか?」

 恭子は驚き、聡の顔を見たきり言葉を発することが出来なかった。想像もしてなかったことなのでびっくりした。まさか自分を選んでくれるとは思ってもいなかったからだ。

「私でいいの?」

 不安そうな表情を浮かべ、彼の目を見た。

「当たり前だよ。いつも明るく、ニコニコしている恭子ちゃんがいいんだよ」

 聡は笑顔で答え、恭子は聡の言葉にドキドキした。

「恭子ちゃんが退院するまでは、おれもこの病院にちょくちょく来るよ」

 恭子はさっきまでの表情は嘘のように、笑顔に変わり、子供のように、はしゃいでいた。やはり喜怒哀楽の激しい子供っぽさが残っている。

 

 恭子にとっての幸せは更に続いた。まちにまった4月がやってきたのだ。病室の窓からはサクラヒルズの満開の桜が見える。恭子は朝もなく、昼もなく、夜もなくずっと桜を上から覗いていた。上から見るとピンクの絨毯を敷き詰められたようで、風が吹くと、ピンクの絨毯に波が出来る。見ているだけで幸福感を感じられ、トイレに行っても、その一瞬に様相が変わっているかもしれないと、慌てて窓辺に向かう。恭子が桜に見とれているとき、医院長先生が入ってきたが、その事に気づかなかった。

「桜、奇麗ね」

 医院長先生の声に驚き、恭子は後ろを振り返った。

「いつまで桜、見られるんです?」

「1,2週間くらいかな」

「儚(はかな)いですね」

 恭子はその自分が発した言葉に暗くなった。恭子は元々明るい性格で暗くなることはあまりなかったが、自分の病気のことを知ってからは暗くなることが多くなった。

「花が散るように、私も散るのかな?」

 医院長先生は、その言葉に驚いた。この病院が出来て1年、難病患者が来たのは初めてだ。まだ死者は1人も出していない。ここで恭子が死ぬと、初めての死者となる。死なすわけには行かない。名誉のためでもあり、世間体もあるが、それよりもまして恭子の事を愛していたからだ。

「絶対、先生が死なせないから」

 医院長先生の言葉は力強かった。恭子の目を凝視したまま目を離さず、力強さが伝わってきた。でも恭子は、この言葉を信用することは出来なかったが、力強さに愛情を感じ、目から涙が潤んだ。

 

 医院長先生が出た後、すぐに看護婦が入ってきた。

「昨日、休みだったので恭子ちゃんにプレゼントを買ってきたの」

「えー、私に」

 恭子は、目を輝かしながら喜んだ。

「はい、どうぞ」

「ありがと〜」

 恭子は店の名前の印字された大きな紙袋を受け取ると、嬉しそうにお礼を言った。中を覗き込むと、ピンクの服が見えた。

「わー、可愛い」

 ピンクの服を手に取ると、自分の体に当ててみた。暫く、この病院から出ていないので、買い物にも行ってない。久しぶりに見る新しい服に興奮していた。

 紙袋の中には、もう一つ箱が入っていて、靴だというのはすぐに判った。

「よかったら着てみて」

 嬉しそうにしている恭子を見て、看護婦も嬉しそうに言った。

「覗かないでよ」

 恭子はバスルームに駆け出し、ドアから顔を覗かし、明るく言った。

 暫くするとバスルームから出てきて、はしゃいだ。淡いピンクのノースリーブのワンピースで、スカート丈は短い。足下は淡いピンクの布地のローヒールのカジュアルな感じのサンダルだ。

「お姉さん、似合う?」

 恭子は看護婦の前で回って見せた。回った瞬間さわやかな風が吹いた。

「似合うよ」

「これからサクラヒルズに行ってみる」

「うん」

 さっきまでの暗い気持ちは吹っ飛んでいた。

「お姉さんも、いっしょに行かない?」

 恭子は明るく言った。

「私は仕事があるから無理よ」

「じゃー、1人で行ってくる」

 少しすねた顔を見せたが、すぐに気持ちを切り替え、喜んで出ていった。

 

 ついにこの日が来た。待ちに待ったこの日が来たと恭子は思った。サクラヒルズに何度も行きたいと思ったが、どうせ行くなら満開のときまで我慢しようと今まで我慢していたのだ。1階のホールを抜けるとガーデンヒルズ。ここに来るのも久しぶりだ。緑が奇麗で気持ちまで洗われる感じがする。

 ガーデンヒルズを通り南まで行くと、病院の建物に沿ってサクラヒルズが続いていた。20−30mはある道幅に5m間隔で桜が植えられていて、並木道と言うより、桜の林だ。前方は全てがピンク色になっていて、恭子は、あまりの美しさに感動を憶えた。病院の白い建物にもピンクが映り込み、反対を見れば、緑に覆われた林の崖と、神戸の街、神戸の海が見えた。

「きれい!」

 ここから見る景色だけでも充分綺麗だった。恭子は目をパチクリさせながら、暫く見ていたい気持ちになった。桜の中を見ると、チラホラ人も居て、どこまでも木が連なっているのが見える。

 暫く眺めた後、意を決して、サクラヒルズの中に入っていった。辺り一面桜で上を見ても桜、横を見ても桜で、ピンクに包まれていて、何とも言えない幸せ感を感じた。その隙間から空の青が覗いていて、桜のピンクと、空の薄い青のコントラストが奇麗だ。また南を見ても海のコントラストが奇麗だ。桜の木の間から、漏れ日が見え、辺りのピンクが薄いピンクに光り、それも奇麗だ。地面にはピンクの煉瓦が敷き詰められていて、どこを見てもピンクで奇麗としか言いようがない。そのピンクの中に恭子のピンクのワンピースもとけ込んでいる。若くてぴちぴちした顔、ノースリーブから覗く艶々(つやつや)した腕、スカートから覗いている若々しい足の肌色が桜のピンクに映えていた。恭子はこの道を歩いたり、駆けたりした。この桜の道は250mくらいつづくが、東の端から見ても西の端を見ることは不可能だった。

 恭子はここでも思いっきり深呼吸してみた。マイナスイオン、木の生命エネルギーを思いっきり吸い込んだ。

「気持ちいい」

 すみきった気持ちになり、心から元気になれた。歩き出しても、まだまだ続いていて終わりがない。そのとき海からの風が吹いたかと思うと、六甲の斜面を上がって行き、桜の木を揺らし、桜の花が桜吹雪となり降ってきた。見事な美しさだ。目の前を桜の花びらがゆらゆらと降ってきて、髪の毛や体に落ちてきた。少し歩くと、また海からの涼しい風が吹き、恭子の真っ黒な長い髪を揺らし、桜の花が降ってきた。上を見ても、前を見ても桜の花びらがゆっくり下りてくるのが見える。恭子は幸せを感じた。病気を知ったときとは違い、今は晴れ晴れした気持ちだ。

「生きていてよかった、日本人でよかった」

 と感じた。桜の林を歩いていると、ある事を思い出した。小さいころに母に聞かされた、母の子供の頃の感動的な話だ。

 母が子供の頃、近所に1本の大きい桜の木があり、町の人にとって、その桜は生活の中心になっていた。待ち合わせの場所,世間話をするところ、休憩するところ、子供の遊び場など、町の人みんなが活用していた。しかしある時、道路拡張のために工事業者が入り、周りの木を切り倒していった。それに我慢できなくなった高校生の母は、工事業者に手紙を出した。手紙の内容は以下のようなものだった。

「拝啓 早春の頃 私のような一高校生がこんな手紙を書くのは誠に恐縮なのですが、あの桜の木を切らないで頂きたいのです。私は子供の頃から、あの桜の木が好きで、子供の頃はあの木に登ったり、蝉取りしました。中学生になればあの桜の木の下で友達と座り何時までも話し、高校生になれば男の子とあの木の前で待ち合わせし、デートもしました。町の人も同じように、あの桜の木を町のシンボルと思っていて、思い出の場所なんです。これからも街のシンボルとして置いていて欲しいのです。このような不躾(ぶしつけ)な手紙を出すことをお許しください。敬具」

 母は本当に工事業者に手紙が届くか心配だったし、届いても果たして高校生が書いた手紙を読んでくれるか不安だった。それから数日経っても、周りの木は切られて行くが、この桜の木だけは切らずに残っている。そして道は舗装されても、あの木だけは、そのままだ。出来上がると、最初の計画とは違い桜の木は残り、その部分だけ道が迂回されている。道の真ん中に大きい木があるため、こうするしかないのだ。明らかに変だ、あの手紙を読んでくれ、その意見を取り入れたとしか思えない。後から判ったが、施工業者が高校生の手紙を読み、心をうたれた事を風の噂で聞いた。母は、一高校生の意見を施工業者が聞いてくれた事に感謝した。道が出来上がり、1週間後桜は満開の花を咲かせ、そこで高校生の母は泣いた。そしてこの桜は今も残っているらしい。

 恭子も、この話を最初に聞いたときは心を打たれた。母にとっては一本の桜の木が、このサクラヒルズの大量の桜の木にも匹敵するくらいの価値があったのだろう。

 恭子は、そろそろ部屋に戻ろうと思うが、サクラヒルズと別れることに名残惜しく感じ、桜の枝を少し折った。病室に戻ると、空いているビンを捜し、そこに桜の枝を生けた。1本の枝だが、ある程度の強度を保ち、7個のしっかりした花を開かせ、こぢんまりとしているが桜を感じることが出来、幸せを感じることが出来た。

 

 桜を生けていると、看護婦が入ってきた。その桜の枝を見ながら言った。

「サクラヒルズどうだった?」

「うん、奇麗だったよ。桜の枝折ったけど、怒られないよね?」

 看護婦はニッコリ微笑んだ。

「私も仕事終わったら行こうと思うの。夜の桜も奇麗よ」

「お姉さんが行くなら、私も行く」

 恭子は甘えて見せた。

「また行くの?」

「何度でも行きたいもん」

「じゃー、後で一緒に行こう」

 看護婦は笑顔で受け入れ、恭子は笑顔で喜んだ。

 

 金田、鶴田、佐々木、正田の4人は大学のサークル仲間で、山道を歩いていた。切り立った崖の中に細い道が続いている。崖を見ると、木が覆い茂り、川の音がするが川は見えない。しかし川までの距離はだいぶんあることは、流れている水の音量で察しがついた。足を滑らしたら大変なことになる。4人は足下に気遣いながら歩き、無事通り越すことは出来たが、こう言うところがいたるところにある。1時間くらい歩いたときだろうか、

「危ない」

 と言った鶴田の言葉に前を歩いていた佐々木と正田は振り返った。見ると金田が足を滑らし、崖を滑っていった。崖は20mくらいある。3人の顔からは一瞬にして血の気が引いた。切り立った崖は垂直に近い状態で、下は谷になっている。金田は何とか助かろうとして、何かにつかまろうとするが何もつかまる物がない。このまま下に落ちると死んでしまう。腕から血を流しながら、落ちるスピードを緩めようとするが、垂直に近い崖でスピードを緩めることは無駄に近かった。勢いよく滑り落ちた金田は、少し飛び出した岩に乗り、止まった。それを見て、3人は少し安心した。

「大丈夫か?」

 佐々木は上から声をかけたが返事はない。どうやら落ちた衝撃で意識を失ったみたいだ。

 3人にも少し安堵の色が見えた。しかし、その岩とて、そんなに頑丈な物ではなく、いつ壊れて金田が真っ逆様に落ちるとも限らない。また意識を失っているので早くしないと、そのまま落ちるかもしれない。3人がいるところから岩までは5m以上ある。助けたくても、助けられる距離ではないが、3人はどうしても金田を助けないといけない。3人で助ける方法を模索した。

「俺が下りるよ。体にロープを縛ってくれ」

 鶴田の表情は真剣だった。

「それは危険だ」

 佐々木、正田は止めた。

「他に助ける方法がないんだ。俺に行かせてくれ」

 2人が止めても鶴田は聞かなかった。鶴田の体をロープで縛ると、下りる準備をした。自分が行くと言ったものの、崖に立ち、下を見ると足がすくんだ。

 鶴田の体に縛ったロープはいったん近くにある大きな木に通し、佐々木と正田が落ちないようにロープを支えた。鶴田が一歩踏み込むと小さい石が谷めがけて落ちていった。もう一歩踏み込むと、もう完全に体は宙に浮いた状態だ。2人を信用し、下りていくしかない。鶴田は一歩づつ崖を歩きながら下りていった。恐怖で顔はこわばっているが、下りていくしかない。半分くらい下りていったところで、急にロープがゆるみ、加速して鶴田が落ちていった。佐々木と正田が支えきれず、ロープがゆるみ鶴田は崖を滑っていったのだ。そのとき3人の表情は凍り付いた。鶴田は、俺も死ぬのかといった表情をし、心臓は大きく高鳴るが、スピードは緩まない。必死になって、岩をつかもうとするが、指を切るだけで、スピードは緩まない。金田が居るとこよりも下に来たとき、半分諦めの境地に立った。しかし7mくらい落ちた所で、止まった。宙ぶらりんになった鶴田の表情からは、血の気を失い、放心状態になっていた。

 鶴田が止まったのは、佐々木がロープを掴んだからだ。木に回していたロープはほどけ、腕の力だけで引っ張り上げるしかなかった。滑ったロープは佐々木の腕をかすめ、ナイフのように切れ、血がたれていた。引っ張り上げようとして腕に力を入れると、切れた腕から血が大量に流れた。木にロープを回していたときに比べ倍の力が必要になる。足下は滑り、谷の方に引っ張られる。押された砂利が崖目掛けて落ちていく。2人は顔を真っ赤にして、鶴田を引っ張り上げた。

 鶴田もそのとき岩で腕をこすり、腕から血がたれていた。お互いロープを持つ手に力を入れると、激しく血が落ちていく。ロープを真っ赤に染めながら、鶴田は金田が居る岩場まで上がることが出来た。鶴田が金田に呼びかけ、体を揺すると目を覚ました。その間に2人はロープを木にかけた。その後、素早く鶴田は2人が居るところまで駆け上った。

 そして、金田の居るところまで、ロープを垂らし、3人でロープを支えながら、金田に上がってくるように指示した。金田はロープをしっかり握り、垂直に近い崖を足で歩くようにして、上に上がってきた。崖を1歩、2歩歩くと、ロープの先を腕で掴み、更に1歩、2歩と歩き、上がりきったとき4人は安堵のため息を付いた。

 後で判ったが、金田は岩に着地したときに肋骨を折り、軽い脳しんとうを起こしていた。金田は無事に上り切った後で、肋骨の痛みをうったえた。鶴田、佐々木も腕から血が大量に流れ出ている状態で危ない。金田が上り切ったときに3人は意識を失い倒れ、その後3人は救急車で運ばれた。

 

 母はベットのそばでリンゴの皮をむいている。恭子が笑顔なのを見て安堵した。この前会ったときは、自分がうかつな事を言ったまでに恭子を泣かしてしまった。しかし今は笑顔でいるのでひとまず安心だ。

「嬉しそうね」

 母はむいたリンゴを渡す。

「私ね、彼が出来たの」

「え、いつ?」

 母は冗談を言っているのだと思った。入院していて外へ出てないはずなのに彼がなぜ出来るのか不思議だった。

「2回もデートしたの。その人はもう退院したんだけど、つき合って欲しいって言われたの」

 恭子は嬉しそうに喋った。嬉しそうにしている娘を見て、母も喜んだ。

「この前、暴れ出した恭子を見て、一時はどうなるかと思ったのに。お母さん嬉しい」

 母は、この前のことを思い出し涙を流した。

「お母さん泣かないでよ」

「私は元気だから。この病院に来て、いいことばかりなの。今までで一番幸せかもしれないわ」

 その言葉に、また母は泣き出した。恭子は慰めるように、

「お母さん、来て」

 と窓辺に呼び、サクラヒルズを見せた。

「奇麗でしょ。下に行ったら、もっと奇麗よ」

 恭子は元気さをアピールした。母は涙をハンカチで拭い、

「今日は恭子に、いい話を持ってきたの」

「何?」

「この病院に料亭があるの知ってる?」

「この病院に、そんなところあった?」

 恭子は不思議そうな顔をした。

「1階の西の端にあるんだけど、明日恭子を連れて行ってあげようと思って」

「エー、行く行く」

 恭子は無邪気に喜んだ。

 

 恭子は床につくといつものように今日のことを思い出した。目をつむれば奇麗なサクラヒルズが目の前に浮かぶ。前方は桜、桜、一面桜。空を眺めれば、空と桜のコントラストが奇麗。海と桜のコントラストも奇麗。風が吹き、目の前に桜吹雪が降っている様子が脳裏に浮かび、幸福感を感じていた。更に明日の料亭のことを考えると、幸福感は増長した。

「明日の料亭楽しみだな。何を食べさせてくれるのかな」

「料亭に行くのだから今まで食べたことがないメニューが出るのだろうな」

 そう考えるとワクワクしてきた。

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7へつづく